銀河群を取り囲む巨大なガスのリングの起源

【2010年7月6日 CFH

スーパーコンピュータによるシミュレーションで、しし座の方向にある巨大なリング状のガス雲の形成プロセスが明らかになった。10億年以上前に巨大な銀河同士が衝突し、一方の銀河の円盤のガスが引き伸ばされて、直径65万光年もの巨大なリングになったという。


(しし座銀河群のガス(黄・オレンジ色)の分布の画像)

しし座銀河群のガス(黄・オレンジ色)の分布。クリックで拡大(提供:CFHT/Astron - P.A. Duc)

(コンピュータシミュレーションによる、衝突から10億年後のガスのようすの画像)

コンピュータシミュレーションによる、衝突から10億年後のガスのようす。クリックで拡大(提供:CEA - Le'o Michel-Dansac (CNRS CNRS/INSU Universite' Lyon 1)

しし座銀河群は、しし座の方向約3300万光年の距離にある、近傍宇宙を代表する銀河群の1つだ。この銀河群を取り囲むように、差し渡し65万光年にも及ぶ巨大なリング状のガス雲が存在する。1980年代に発見されて以降、ミステリアスな存在として、その起源や特性が論議されてきた。

銀河を取り巻く星とリング状のガスといえば、いわゆる銀河同士の衝突で形成されるリングが思い浮かぶが、しし座銀河群のリング状ガス雲も同様のプロセスでできたのだろうか。その形成プロセスを確認するために、スーパーコンピュータによる数値シミュレーションが行われた。

その結果、10億年以上前に3800万光年を超える距離を隔てて存在していた巨大な銀河同士が衝突を起こし、その際、一方の銀河の円盤のガスが吹き飛ばされてリング状となったことが示された。また、衝突を起こしたのは、銀河群のほぼ中央に位置しているNGC 3384と、銀河群の外側に位置する巨大楕円銀河M96であることも示された。

銀河が成長する初期段階では、冷たい原始ガスが集まることが重要なプロセスだと考えられているが、この過程が近傍宇宙でも起こっているかどうかを調べるため原始ガスの検出が試みられている。カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡に搭載されているカメラ「MegaCam」によって、しし座銀河群に見られるリングのもっとも濃い領域が可視光で初めて観測され、リング状のガスが星を形成できる状態にあることが示された。これは、しし座銀河群のガスが原始ガスではないことを意味しており、さらにコンピュータシミュレーションによって、銀河の衝突で広がったガスであると示されたというわけだ。

なお、以下のリリース元では、コンピュータによって再現された銀河同士の衝突のシミュレーション動画を見ることができる。