オリオン座大星雲の若い星を観測し、惑星の誕生と進化に迫る

【2010年4月8日 JPL

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが、オリオン座大星雲(M42)の同じ領域を何度かに分けて繰り返し観測した。1500個もの若い星の光度変化を調べ、個々の星を取り巻くちりの円盤の変化を探り、惑星の誕生やその進化に迫る。


(スピッツァーがとらえた星の集団の画像)

スピッツァーがとらえた星の集団。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーは、2009年5月に冷却用の液体ヘリウムを使いきり、超低温モードでの運用を終了した。その後、高温運用に入ったスピッツァーが、オリオン座大星雲M42に存在する若い高温の星の集団を観測した。

スピッツァーはオリオン座大星雲の同じ領域を繰り返し観測し、1500個もの若い恒星状の天体(原始星)の周期的な光度変化を追っている。これは「Young Stellar Object Variability」と呼ばれる、高温運用で行われる観測プログラムのうちの1つで、第1回目の観測では40日間で約80枚の画像が撮影された。次の観測は2010年秋に予定されている。

この領域で輝いている星の年齢は約100万歳で、46億歳の太陽に比べてはるかに若い。若い星は、太陽のように成熟した星に比べて明るさが変わりやすく、自転の速度も速い。明るさが変動する理由の1つとして、太陽の黒点のような低温領域「コールドスポット」や、星を形成したガスの一部が星に降着する際に生じる衝撃波で温められた表面の領域「ホットスポット」の存在があげられている。

若い恒星の明るさが変わる理由はほかにもある。スピッツァーの赤外線観測能力は、若い恒星を取り巻くちりの円盤をとらえることができる。これらの円盤でちりが集まれば、惑星が形成されるかもしれない。若い円盤の形が左右非対称な場合、惑星が形成されているか、またはすでに形成された惑星の重力の影響を受けている可能性がある。円盤の形が歪むと、中心星からの光が隠されるなどの理由で明るさの変化が観測されるのだ。

NASAのスピッツァー科学センターの主任研究員John Stauffer氏は、「恒星を取り巻くちりを検出できる波長で、これほど多くの星の周りが観測されれたことはこれまでにありません。 私たちは、多種多様な変化をとらえています。それは、円盤内でちりが集まったり、円盤の一部が歪んだりした結果なのかもしれません」と話している。

Stauffer氏らの研究チームでは、惑星の進化という壮大なドラマに関する理解を深めるために今後も観測を続け、円盤や星の明るさの変化に関するデータを蓄積していく予定だ。