天の川銀河のバルジに原始銀河の残骸か

【2009年11月30日 ESO

天の川銀河の中心部に、通常と異なり少なくとも2つの世代の星から構成されている球状星団がある。この球状星団は、天の川銀河の形成初期に天の川銀河と合体し、バルジを形成するもとになった原始銀河のうちの1つではないかと考えられている。


(VLTがとらえたTerzan 5の近赤外線画像)

VLTが近赤外線でとらえたTerzan 5。クリックで拡大(提供:ESO/F. Ferraro)

球状星団は、もっとも年老いた星の集団で、いわば天の川銀河の歴史の目撃者と言える。球状星団を観測することは、考古学者が古い地層を掘り起こして人類の歴史を調べるようなものである。

伊・ボローニャ大学のFrancesco Ferraro氏らの研究チームは、天の川銀河のバルジに存在する球状星団をVLTを使って赤外線で観測した。バルジとは、星がひしめく銀河の中央部分で、通常は大量のちりに隠されているため内部まで見ることはできない。

観測の結果、球状星団「Terzan 5」が、およそ120億歳と60億歳という、少なくとも2つの年代の星で構成されていることが明らかとなった。通常の球状星団は、同時期に誕生した星で構成されている。

この特徴は、Terzan 5が天の川銀河と合体し、バルジを形成するもととなった原始銀河の残骸であることを示唆しているという。

研究チームのEmanuele Dalessandro氏は、「このような例外的な球状星団は、これまでに天の川銀河の周縁部で1つだけ観測されたことがありますが、バルジでは初めてのことです」と話している。

また、Ferraro氏は「研究者が熱い議論を戦わせているバルジの起源に光を当てる発見の第一歩となりました。バルジには似たような残骸がまだ複数隠れているはずです。その中に天の川銀河の形成の歴史が綴られています」と話している。