太陽系を包むヘリオスフィアの果てに謎の模様

【2009年10月21日 SCIENCE@NASA

NASAの星間境界観測機「IBEX」が、太陽系を包む「ヘリオスフィア」を内側からとらえた。ヘリオスフィアの全体像が可視化されたのは初めてのことだが、そこには起源のわからないリボン状の構造が見えている。


(IBEXによる全天地図)

IBEXによる全天地図。ENAは赤で多く、紫で少ない。V1とV2は、それぞれボイジャー1号と2号の位置。クリックで拡大(提供:NASA/Goddard Space Flight Center)

(ヘリオポーズ面に描かれた高速中性原子の流れ)

ヘリオスフィアの果てである、ヘリオポーズ面に描かれた高速中性原子の流れ。黒い線は磁場の向き。クリックで拡大(提供:Adler Planetarium/Southwest Research Institute)

昨年10月に打ち上げられた星間境界観測機「IBEX」による約6か月の観測データから、ヘリオスフィア(太陽圏)の全天地図が作成された。

ヘリオスフィアとは、太陽系を包む巨大な磁気の泡のようなものだ。この泡は、太陽から生じて冥王星の軌道の先にまで広がっている。さらにその外縁部は、宇宙線や恒星間ガスなどが太陽系の外から侵入するのを防ぐ役割を担っている。そのため、構造や大きさや強度を知ることは、重要な研究課題の1つとなっている。

しかし、ヘリオスフィアは巨大で、空全体を埋め尽くしており、光を発することもなく、これまで誰も見たことがなかった。

IBEXには「TWINS」と呼ばれる広視野中性原子撮像・分光器が搭載されており、地球のまわりを周回する軌道上から、太陽風と太陽系の外からやってくる恒星物質がぶつかってできる高速中性原子(ENA)を検出・計測することができる。

そのTWINSを使った観測で作成された地図に、ENAを強く発するリボンのような細長い構造が見つかった。このような構造が存在するとは予測されたこともなく、起源はもちろん不明である。

IBEXの主任研究員で、米・サウスウエストリサーチ研究所(SwRI)Dave McComas氏は、「このようなリボンの存在は予想外でした。しかも、どうやって形成されたのかもわかりません。ヘリオスフィアの外縁部に関する、これまでの考え方を改める必要が出てきました」と話している。

粒子の巨大な流れは、銀河の磁場方向に対して垂直に走っている。「これは偶然の一致ではありません。ヘリオスフィアと太陽系の外に広がる銀河空間との間で起きている、なにか基本的な作用をわれわれが見逃しているのです。理論系の研究者は、今必死になってそれを解き明かそうとしています」(McComas氏)。

IBEXは、現在2度目の観測を行っている。次に作成される全天地図で、もしリボンに変化が見られれば、それがなぞを解き明かす鍵になるかもしれないと注目されている。