4D2Uプロジェクトの映像作品、シーグラフアジア大会で入選

【2009年10月14日 国立天文台 アストロ・トピックス(510)

日本の月探査衛星「かぐや」やRISE月探査プロジェクトがとらえたデータを、国立天文台4次元デジタル宇宙(4D2U)プロジェクトが映像化した作品が、世界最大のコンピュータ・グラフィックスの祭典「シーグラフ 2009」のアジア大会で入選した。


アストロ・トピックスより

このたび、国立天文台4次元デジタル宇宙(4D2U)プロジェクト制作の映像作品 "Entire Topography of Lunar Surface"(日本語タイトル、「月面全体の地勢図」)が、世界最大のコンピュータ・グラフィックス(以下CG)の祭典であるシーグラフ(注1)のアジア大会において、アニメーションシアター(注2)で入選を果たしました。総計数百点に上る投稿作品から選ばれた44の入選作品は、シーグラフに集まる数万人のCG関係者のみならず、映像業界全体からの注目度も高く、入選はひじょうに名誉なこととされています。

"Entire Topography of Lunar Surface"は、月周回衛星「かぐや」に搭載された14の観測機器のひとつであるレーザ高度計によって観測され、RISE月探査プロジェクトのメンバーが処理や解析をした月の全地形データを基に月面を映像化したものです。従来の衛星では探査されていない緯度75度以上の極域を含む高精度な月面地形の高度情報と、それを可視化するための技術開発、美しい映像作品に仕上げるための芸術的感性等が、プロジェクトにおいて結びついた結果、今回の入選につながったといえます。

映像を制作した国立天文台天文シミュレーションプロジェクト 専門研究職員の中山弘敬(なかやまひろたか)さんは今回の映像に関して次のようなコメントを寄せています。「今回使用したレーザ高度計のデータは静的なものであったため、視聴者を飽きさせないための演出には手間をかけています。観測によって得られた静的なデータも、演出次第で映像として成り立つことを示せたよい例になったかと思います。かぐやがとらえた“本物の月”を、多くの人に楽しんでいただければと思います。」

"Entire Topography of Lunar Surface"の映像は、今年12月上旬に横浜で行われる「シーグラフアジア2009」会場で上映される予定です。また、今秋より4D2Uプロジェクトのウェブサイト上での公開を予定しています。

(注1)シーグラフはアメリカ計算機学会の分科会のひとつで、CG分野における最高峰の学会・展示会として、既に30年以上の歴史をもっています。アジア地域で開催されるアジア大会は昨年度から始まりました。

(注2)アニメーションシアターは、シーグラフを象徴するイベントのひとつで、世界中からその年を代表するCG作品を選出して、会場内のスクリーンにて連続上映する催しです。