メタンの雨で満ちるタイタンの湖

【2009年2月2日 NASA JPL

NASAの土星探査機カッシーニがとらえた画像から、衛星タイタンの南極に出現した湖らしき地形が見つかった。液体のメタンが雨となって降り注いだのではないかと考えられている。


(湖と思われる地形の画像)

タイタンの南極付近。湖らしき地形が丸で囲まれている。白い綿状のものは雲。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/SSI)

(タイタンの最新地図)

タイタンの最新地図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/SSI)

土星の衛星タイタンの南極付近を撮影した画像から、新しい湖と思われる地形が見つかった。2004年7月に撮影された画像(左)ではまわりの地面と同じ色をしていた領域が、2005年6月の画像(右)では黒くなっていたのである。

この領域はたびたび雲に覆われているようすが観測されていた。そのため、発見された地形は巨大な嵐によってもたらされた雨がたまって形成されたのではないかと考えられている。降り注いだ液体は、水(H2O)ではなく、メタンのような超低温の炭化水素である。

これまでの探査で、タイタンの南極や北極では湖と考えられる暗い地形が数百も発見されている。そのうちの1つからは、実際に液体のエタンが検出されている。

しかし、地球の豊富な水とは違って、タイタンの「湖」がすべてメタンで満たされていたとしても、その量は少ない。そのままでは、湖からタイタンの大気へメタンが蒸発する反応は1000万年も持たないという。そのため、地下に大量のメタンが隠れている可能性もある。

タイタンは、太陽系で唯一濃い大気が存在する衛星だ。しかし、その大気がいつ作られたのか、そしていつまで存在するかは謎である。カッシーニは2008年6月に4年間の主要探査期間を終え、現在2年間の延長ミッションを続けているが、タイタンの季節変動は引き続き重要な観測対象となりそうだ。