惑星の材料がはぎとられている現場

【2008年12月26日 Spitzer Newsroom

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが、多くの星がひしめく星形成領域を観測した。巨星から噴出するガスや光によって、小さな星のまわりから惑星形成の材料となるちりが吹き飛ばされているようすが明らかとなった。


(スピッツァーが撮影した小さな星を取り巻くちりの円盤が吹き飛ばされているようす)

スピッツァーが撮影した小さな星を取り巻くちりの円盤が巨星の影響で吹き飛ばされているようす(赤外線で撮影した疑似カラー画像)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Harvard-Smithsonian CfA)

「W5」は、カシオペヤ座の方向約6500光年の距離にある星形成領域である。ここでスピッツァーは、太陽の20倍ほどの質量を持つ巨星が、太陽と同じくらいの3つの小さな星に与えている影響を観測した。

3つの星の年齢は200万から300万歳である。この年齢の恒星のまわりでは、ちりの円盤内で惑星の形成が始まると考えられている。

しかし、スピッツァーがとらえた画像では、小さな星を取り巻く(惑星形成の材料である)ちりの円盤の一部が、巨星から噴き出す大量のガスや強い放射を受けて、まるで彗星の尾のように巨星と反対の方向へたなびいている。

星から引き剥がされている外側のちりは、太陽系でいえば、天王星や海王星の軌道以遠に相当する位置にある。そのため、地球のような内惑星は誕生できても、外惑星が誕生する可能性はないと考えられている。

もっとも、ちりの円盤は、天文学的なスケールからいえばひじょうに短命で、100万年ほどで完全に消えてしまうと考えられている。

スピッツァーが、巨星によって吹き飛ばされるちりの円盤を観測したのは、これまでに数例しかない。今回の観測結果は、そのうちのベストショットと言えるもので、過酷な環境に誕生した小さな恒星や惑星が直面する厳しい進化の一場面をわれわれに見せてくれている。