噴出口の下、やはり水か 土星の衛星エンケラドス

【2008年12月2日 JPL News&Features

土星の衛星エンケラドスは、NASAの探査機カッシーニが水蒸気や氷の粒が噴き出すようすをとらえたことで注目を集めている。地下に隠れる液体の水がこの現象に関わっているかもしれないからだ。新たに発表されたカッシーニの観測結果は、この仮説を支持している。


(噴出を上空から観測するカッシーニの想像図)

噴出を上空から観測するカッシーニの想像図。クリックで拡大(提供:Karl Kofoed)

2005年以降カッシーニが観測した結果によると、エンケラドスの南極付近の地形、通称「タイガーストライプ(虎縞)」では、水蒸気や氷の粒を含むジェットが火山のように噴き出している。これが水の証拠と言えるか否かで、研究者の見解が割れている。

エンケラドスは太陽から遠く離れた冷たい環境にある天体だ。しかし楕円軌道を描いていて、土星に近づいたり遠ざかったりするため、全体として土星の重力で引っ張られたり縮められたりを繰り返している。この変形で生じる熱で溶けた水が、地下からマグマのように噴き出して氷火山を引き起こしているかもしれない。

液体の水が存在するとなれば、エンケラドスは生命を宿していてもおかしくない環境ということになる。カッシーニの観測は、冷たい衛星を熱い議論の中心へ引き出したのだ。

しかし、土星の重力で表面の割れ目が開閉することで噴出が起きている、という説も提案されている。この場合、地下の氷が外部にさらされて急激に気化する現象ですべてが説明でき、水の液体を仮定する必要はなくなる。

NASAジェット推進研究所の科学者で、カッシーニ紫外線分光撮像器チームのCandice Hansen氏は、「開閉説」を否定する研究結果を発表した。Hansen氏が率いる研究チームは、カッシーニから見てエンケラドスのジェットが背景の恒星をさえぎるようすを、2005年と2007年に観測した。タイガーストライプの割れ目は2005年には開いていて、2007年には閉じていたはずである。しかし、2007年に噴出していた物質の量は2005年の約2倍であることを、観測データは示していた。

逆に、2007年に提唱されたモデルが今回の観測結果に当てはまっている。それによれば、地下の(おそらく液体の水からなる)暖かい場所から、細い通り道をつたって水蒸気が超音速で噴出している。このモデルでは水が液体でいられるほどの高温となっていることが前提だ。もしかすると、エンケラドスの地下には巨大な液体の湖が眠っているのかもしれない。