ブラックホール連星誕生か、珍しい過剰接触連星

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大マゼラン雲に存在するタランチュラ星雲中の連星VFTS 352を観測したところ、2つの若い星は互いの表面が接触していることがわかった。最終的には1つの巨大な星になるかブラックホール連星になるかもしれないという。

【2015年10月27日 ヨーロッパ南天天文台

16万光年彼方の矮小銀河である大マゼラン雲には、タランチュラ星雲という巨大な散光星雲(星形成領域)が存在する。その中に位置する連星系VFTS 352では、2つの高温で明るい大質量星が互いの周りをたった1日ほどで回っている。2つの星は中心同士が1200万km離れているが、その表面は接近しているため、つながっている。

VFTS 352の想像図
VFTS 352の想像図(提供:ESO/L. Calçada)

VFTS 352の質量は合計で太陽の57倍もあり、表面温度は摂氏4万度だ。質量も表面温度も、VFTS 352のような「過剰接触連星」のなかで記録的なものである。こうした連星系では小さい星が大きい星の物質を吸い取るのだが、VFTS 352は両方の星の質量がほぼ同じであるためそのような現象は起こらず、2つの星を構成している物質の30パーセントが共有されていると推算されている。

このような系は短命であるため、観測されることは非常に珍しい。

VFTS 352が今後たどる運命については、2つ考えられるという。1つは星が合体し、高速で自転する巨大な星になる可能性だ。「高速で自転し続けた場合、ガンマ線バーストという宇宙で最もエネルギーの大きな爆発を起こし、一生を終えることになるでしょう」(ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学 Hugues Sanaさん)。

2つ目の可能性はこうだ。「2つの星がよく混ざり合った場合、星は合体せず、典型的な進化パターンはたどらないと思われます。2つの星は超新星爆発を起こして一生を終え、接近したブラックホール連星になるかもしれません。その場合、強力な重力波源となるでしょう」(オランダ・アムステルダム大学 Selma de Minkさん)。