太陽の100億倍が限界?ブラックホールの成長

【2008年9月9日 Yale University

ブラックホールと言えば、際限なく物を飲み込む恐怖の一方で、ひじょうに珍しい天体というイメージがあるだろうか。今やほとんどの銀河の中心には巨大ブラックホールが見つかっていて、「珍しい」というのは当てはまらない。だがご安心を。最近の研究によれば、その成長にも限界があり、銀河全体を飲み込んでしまうことはないそうだ。


(楕円銀河の画像)

大銀河団の中心部に位置する楕円銀河。その中には、限界まで大きくなったブラックホールが存在するかもしれない(提供:NASA)

われわれの天の川銀河の中心部には、太陽数百万個分もの質量を持つ巨大ブラックホールがある。しかし、宇宙最大級のブラックホールの規模に比べたら、それさえもかわいいものだ。大規模な銀河団に所属する巨大な楕円銀河の中心部には、質量が太陽の10億倍もあるような超巨大ブラックホールが存在する証拠がある。

こうしたブラックホールは際限なく大きくなってしまうのだろうか?米・エール大学准教授のPriyamvada Natarajan氏らは、さまざまな銀河中心ブラックホールを調べて、その質量と存在数の統計を取った。従来の、主に計算による予想では、その関係は反比例に近いとされていた。つまり質量が大きいブラックホールほど見つけにくいが、決して0ではない。しかし、Natarajan氏らの結論は、質量と存在数のグラフを伸ばしていけば、質量が太陽の100億倍を超えたあたりで、ブラックホールの数は0になってしまうだろうというものだった。

この結論には、理論的な根拠もある。ブラックホールの規模が大きくなると、物質を吸い込むだけでなく、その過程で強烈なエネルギーを放出することになる。すると周辺部では、ガスが飛ばされてしまったり高温になりすぎることで、新しい恒星が生まれなくなってしまう。星の誕生と死は結果として物質をかき混ぜることになるのだが、それがなくなることで、もはやブラックホールへは物質が送り込まれなくなるのだ。

ブラックホールは銀河とその星々を単純に破壊してしまうのではなく、相互に影響しながら共存しているようだ。「銀河の進化過程で、巨大ブラックホールが重要な役割を果たしているという証拠はだいぶ集まっています」とNatarajan氏は語る。「いまやブラックホールは、このスペースオペラのプリマドンナなのだと言えるかもしれませんね」