石塚睦氏ペルー渡航50周年記念 国際ワークショップの開催
および ペルー電波望遠鏡観測局の開所式

【2008年6月23日 国立天文台 アストロ・トピックス(390)

日本人天文学者・石塚睦さんは、太陽コロナ観測所を建設する目的で1957年にペルーに渡った。しかし、1979年ついに完成した観測所が、その後反政府テロ組織に爆破され全壊する悲劇に見舞われた。それでもあきめなかった石塚さんの労苦が実り、ペルー初の電波望遠鏡がいよいよ実現する。その石塚さんのペルー渡航50周年を記念する国際ワークショップが6月28日からペルー国内で開催される。


アストロ・トピックスより

(ワークショップのポスターの画像)

ワークショップのポスター。クリックで拡大(提供:International Workshop on NEW ASTRONOMICAL FACILITIES IN PERU)

半世紀前に南米ペルーへ渡り、今もペルーの天文学普及に情熱を傾けている日本人天文学者・石塚睦(いしつかむつみ)さんのペルー渡航50周年を記念する国際ワークショップが、6月28日から7月8日まで、ペルーの首都リマにあるペルー地球物理観測所(IGP)や、ワンカイヨ、イカなど、関連施設がある都市を移動しながら開催されます。

石塚さんは、京都大学大学院在学中の1957年、恩師の命を受け太陽コロナ観測所を建設するためペルーに渡りました。資金難のため建設は難航し、アンデスの高地に観測所を完成させたのは1979年、さらに観測を開始できたのはその9年後でした。

ところが観測開始からわずか3か月後、観測所は反政府テロ組織により武力占拠されてしまいました。夜間戦闘に転用できる赤外線観測装置を差し出し協力するよう要求されましたが、石塚さんが拒否したため、観測所は爆破され全壊してしまいました。さらに、石塚さんはテロ組織から命を狙われ潜伏生活を余儀なくされましたが、それでも「ペルーに天文学を根付かせたい」と、ペルーに留まることを選びました。

現在、石塚さんはIGPで教育天文台建設をはじめとする天文学教育に情熱を注いでいます。

1995年には、次男のホセ・イシツカさんが電波天文学を学ぶために来日し、東京大学で博士号を取得したのち、国立天文台VERAプロジェクトへの参加を経て、2005年にペルーに帰国しました。

ホセさんは、既に役割を終えたペルー民間電話会社の衛星通信用アンテナを無償で譲り受けて改造し、電波望遠鏡として活用する計画を推進しています。しかし、ペルーの厳しい財政状況のため予算はなく、施設の運用費用を募金に頼る状況です。

長年の苦労を知る日本の研究者たちも、石塚さん親子の活動を支援しています。国立天文台では、IGPと互いに研究協力をする協定を締結し、電波望遠鏡への改造に必要な受信機などを支援しています。

こうした努力のひとつがようやく実り、ペルー初の電波望遠鏡がいよいよ実現する運びとなります。間もなくペルー民間電話会社からIGPへのアンテナ譲渡が完了し、電波望遠鏡への改造が開始されます。ワークショップ会期中の7月3日(石塚睦さんがペルーへ渡って51年目の記念日)には、このアンテナのあるワンカイヨで開所式が行われます。

遠い異国に天文学を根付かせるため、親子二代にわたって情熱を注ぐ日本人天文学者の活動をぜひ皆様にも知っていただき、引き続き多くの方々のご支援をお願いいたします。

※この情報は、「ペルーの電波望遠鏡を支援する会」代表の井上允さん(国立天文台)よりご提供いただきました。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>