探査機メッセンジャーが水星スイングバイ、知られざる一面を撮影

【2008年1月18日 MESSENGER Web Site

1月14日(世界時、以下同)、NASAの水星探査機メッセンジャー(MESSENGER)が、2011年の周回軌道投入に向けた最初の水星スイングバイに成功した。探査機が水星に接近したこと自体、実に33年ぶりのことである。


(水星の「知られざる一面」)

初めて撮影された、水星の「知られざる一面」。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington、以下同)

(クレーターだらけの地表)

クレーターだらけの地表。クリックで拡大

(地質活動の跡と推測される地形)

地質活動の跡と推測される地形。クリックで拡大

これまで唯一水星を訪れたことがある探査機は、1974年から75年にかけて3度の接近通過を果たしたNASAのマリナー10号だけである。しかも、撮影できたのは地表全体の45パーセントに過ぎない。水星の自転は遅く、太陽に照らされる部分がなかなか変化しないからだ。

そのため、メッセンジャーのスイングバイは軌道調整が主目的とはいえ、その間に行われる観測自体ひじょうに大きな意義を持つ。水星スイングバイは今回を含めて3回予定されていて、その間に水星の「知られざる面」のうち50パーセントを撮影できる計算だ。もう1つ特筆すべきは、その接近距離。マリナー10号はもっとも近づいたときで317キロメートルだったのに対し、メッセンジャーは水星上空200キロメートルを通過する。

今回のスイングバイで撮影された画像は続々と公開されている。そのいくつかを紹介しよう。

1番目は、メッセンジャーが最接近から80分後にとらえた水星の「知られざる一面」。大部分が、初めて撮影される領域だ。右上の明るい部分は、太陽系最大級のクレーターとして有名なカロリス盆地で、その西半分は今ようやく写されたということになる。

2番目も初めて撮影された領域で、画像の幅は約370キロメートルに相当する。水星の表面はクレーターだらけであることで知られるが、ここにも白い物質が飛び散ったクレーター、数珠つなぎのクレーターなど、さまざまなものが存在する。

最後は、水星の歴史がかいま見える地形だ。画像の幅は約500キロメートルに相当する。左下にある巨大な二重クレーターに注目してみよう。内部が埋められていること、上側の端が崩れていることがわかる。くぼみを埋めたのは溶岩で、地形を崩したのは断層ではないかと推測されている。クレーターの数などから、こうした地質活動が起きた年代も推定できるかもしれない。

メッセンジャーは2004年8月4日に打ち上げられ、これまで地球で1回、金星で2回のスイングバイを行って水星を目指してきた。2011年3月18日に初の水星周回衛星となる予定で、画像の撮影に加え、磁場の調査などを通した内部構造の解明、大気の分析、さらには存在の可能性が指摘されている氷の探索などが行われる。

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