スピッツァーとチャンドラ、遠方宇宙に超巨大なブラックホールを数百個発見

【2007年11月22日 Spitzer Newsroom

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーとX線天文衛星チャンドラによる観測で、90億光年から110億光年の距離に、超巨大なブラックホールが数百個発見された。


(発見されたブラックホールの画像)

発見されたブラックホール。青い丸で囲まれているのが新たに発見されたブラックホール。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (SSC))

(爆発的に形成される星とブラックホールの想像図)

爆発的に形成される星とブラックホールの想像図(提供:NASA/JPL-Caltech/E. Daddi (CEA Saclay))

活動的な銀河の中心核であり、超巨大なブラックホールが潜む「クエーサー」の多くは、数十年もの間、一体宇宙のどこに存在しているのか、観測による直接的な証拠が得られることはなかった。

初めてその証拠を得たと発表したのは、フランス原子力エネルギー庁(CEA)のEmanuel Daddi氏が率いた研究チームだ。同チームでは、宇宙の年齢が25億歳から45億歳だったころ、つまり90億光年から110億光年の距離に存在する1000個の銀河を観測し、そのうち、約200個の銀河の中心にブラックホールが存在していることを明らかにした。

アメリカ国立光学天文台(NOAO)のMark Dickinson氏は、「初期の宇宙では、いたるところにブラックホールが存在していたのです。今までに発見されてきたブラックホールは氷山の一角で、われわれが発見したブラックホールこそ、氷山そのものなのです」と話している。

研究チームが観測のターゲットとした1000個の銀河は、いずれも星を形成中の不規則銀河で、質量は天の川銀河ほど、その中心にクエーサーは存在しないと考えられていた。

しかし、スピッツァーを使った赤外線観測で、そのうちの約200個から通常と異なる量の赤外線放射が見つかった。赤外線は、クエーサー周辺を取り巻いている円盤型の雲に存在するちりがクエーサーによって温められたことによるものだと考えられている。さらにチャンドラによるX線観測で得られた画像を重ね合わせることにより、遠方にある銀河が放つかすかな放射が強調され、クエーサーが放つ強力なX線が明らかとなった。

新たに発見されたクエーサーは、巨大な銀河がどのように進化するのかという、根本的な問題に関する貴重な情報を提供している。

英国ダラム大学のDavid Alexander氏は「クエーサーが活動を開始するために、銀河同士の合体が必要だと考える研究者もいますが、他からの影響を受けていない銀河でも、クエーサーがじゅうぶんに活動しているようすが観測されたのです」と話している。

また今回の発見について、フランス原子力エネルギー庁(CEA)のDavid Elbaz氏は超巨大なブラックホールを動物の象にたとえて、「以前は目隠しで象を研究していたようなものです。われわれは今初めて、象という動物を目にしているのです」と話している。