クエーサーのペアがある所に銀河団あり

【2007年9月21日 Gemini Observatory

クエーサーは単独なら宇宙でもっとも明るい部類に入る天体で、ひじょうに遠方にあっても見つけることができる。このクエーサーを目印にして、遠方の銀河団を発見するユニークな手法が試みられた。


(クエーサーのペアの1つ、QP0110-0219)

クエーサーのペアの1つ、QP0110-0219とその周辺。黄色で囲まれたのがクエーサー。クリックで拡大(提供:Gemini Observatory/AURA)

銀河は空のいたるところで見つけることができるが、それに比べてクエーサーは珍しい存在だ。ただ、典型的な銀河の何倍も明るいので、とてもよく目立つ。

クエーサーは、超巨大ブラックホールが大量の物質を飲み込む際に生成されるエネルギーで輝いていると言われている。当然、物質が多く集まっている領域ほど、クエーサーが生まれやすいはずだ。そして、物質がたくさん存在しているなら、そこではたくさんの銀河が形成されるとも考えられる。ということは、複数のクエーサーが寄り添っていた場合、その周囲には無数の銀河が集まっている可能性がありそうだ。

この簡単な考え方がなかなか有効であることを、ブラジルなどの研究チームが示した。彼らは、まずクエーサーのペアを探した。もちろん、たまたま近くと遠くのクエーサーが同じ方向にある「見かけのペア」では意味がないし、手前に強力な重力源があることで光が曲がる「重力レンズ」で1つのクエーサーの光が2つに分かれて見えているケースにも気をつけなければならない。研究チームはクエーサーのスペクトルを慎重に調べて、本物のペアを4組選んだ。

選んだペアについて、ハワイのジェミニ北望遠鏡と南米チリのジェミニ南望遠鏡で撮影した画像を調べたところ、確かに大量の銀河が見つかった。4組のうち3組のまわりの集団については、銀河の数や分布から見て、実際に重力で強く結びついた「銀河団」である可能性が高いという。

今回の観測は、われわれからの距離が90億光年前後のクエーサーを対象に行われた。宇宙の成り立ちを調べる上では、100億光年以上離れた−すなわち100億年以上前に存在した−銀河団を観測することが欠かせない。今回の手法をさらに遠くのクエーサーに適用できれば、見落とされやすい遠方の銀河団を見つけるのに大いに役立ちそうだ。

クエーサー

ひじょうに遠方にあって通常の銀河数十個分のエネルギーを放出していると考えられている「クエーサー」と呼ばれる天体がある。観測されているクエーサーはもっとも近くても8億光年かなたにある。正体は今もって謎だが、大質量ブラックホールをエネルギー源としているとする説が有力だ。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.92 クエーサーって何? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])

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