今回は暗い極大、はくちょう座χ

【2007年9月21日 アストロアーツ】

はくちょう座の首に輝く変光星、はくちょう座χは、昨年8月上旬に記録的な明るさとなった。今月中旬に再び明るさが極大を迎えたはくちょう座χだが、今回は肉眼で見るのが困難なほど暗かった。


文:滋賀県ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん

(はくちょう座χ周辺の星図)

はくちょう座χ周辺の星図。ステラナビゲータVer.8で作成。クリックで拡大

(はくちょう座χの光度曲線)

はくちょう座χの光度曲線(VSOLJメーリングリストデータより)。クリックで拡大(提供:高橋進氏(ダイニックアストロパーク天究館))

ミラ型変光星のはくちょう座χ(χ Cyg)は周期およそ408日で4等から14等くらいまで明るさを変える脈動変光星です。ただ極大光度はその時々でかなり異なり、昨年8月の極大は3.7等とたいへん明るい極大でした。ミラ型変光星の極大光度の予測は難しく、時によってはまったく予想外の等級になることもありますが、明るい極大の次は少し暗めの極大になるといった経験則などから多少の予想は可能です。前回が大変に明るい極大だったことから今回は暗めの極大になるのではないかと予想されていました。

VSOLJ(日本変光星観測者連盟)メーリングリストに報告のあった観測データを見ると、はくちょう座χは4月初めに極小になったあと、ゆっくりと明るさを取り戻していきました。8月初めにこの星特有の増光の停滞期が少しあり、およそ10等の光度が少し続きましたが、その後は日に0.1等ほどのスピードでどんどん明るくなっていきました。しかしこの増光も9月8日くらいまでで、その後は5.9等前後の明るさを推移しています。このことから正確な極大日がいつだったのかはまだはっきりしませんが、今回の極大は9月中旬でおよそ5.9等だったと見込まれます。前回に比べると2等級以上も暗い極大ですが、こうした極大光度の変化もミラ型変光星の面白さといえます。この後はゆっくりと減光していくことと思われ、次回の極大は2008年10月末ごろの予定です。