若い星を取り巻く円盤に大量の水蒸気を検出

【2007年9月7日 Spitzer News Room

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーによる観測で、将来惑星が誕生すると思われる原始惑星系円盤に、地球の海水の5倍に相当する水蒸気が検出された。


(銀河NGC 1333中の原始星NGC 1333-IRAS 4Bの画像)

銀河NGC 1333中の原始星NGC 1333-IRAS 4B。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/R. A. Gutermuth (Harvard-Smithsonian CfA))

(原始惑星系円盤と原始星を取り囲むガスと塵の雲のイラスト)

原始惑星系円盤と原始星を取り囲むガスと塵の雲のイラスト。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (SSC))

米ロチェスター大学のDan Watson氏らの研究チームは、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使い、原始星30個を観測した。原始星とは、ガスと塵の雲から凝縮したばかりの、生まれたての星だ。さらに星の周囲には、やがて惑星を誕生させると考えられる原始惑星系円盤(解説参照)が形成されている。

観測した30個のうち、ペルセウス座の方向約1000光年の距離に位置する「NGC 1333-IRAS 4B」で、原始惑星系円盤から水が検出された。スピッツァーの観測結果によれば、NGC 1333-IRAS 4Bでは、原始星を取り囲む雲に存在する氷が原始惑星系円盤にぶつかりながら、水蒸気となって降り注いでおり、水の量は、地球の海水の5倍に相当する。

赤外線の目をもつスピッツァーがとらえたのは、円盤にぶつかった氷が急速に温められて赤外線の波長で輝くようすだ。しかし、なぜNGC 1333-IRAS 4Bだけで水が検出されたのだろうか。その理由としては、ガスや塵のもっとも濃い部分が、スピッツァーに対してちょうど正面を向いていたためであり、かつ水がこのような形で存在する限られた期間に、ちょうど遭遇したためと考えられている。

「惑星が形成されると考えられる領域に、水が運ばれるようすがとらえられたのは、初めてのことです。地球の水は、彗星や小惑星によってもたらされたと考えられていますが、今回観測されたように水は、原始星を取り囲む雲の中にも氷として存在しているのです。円盤で検出された水蒸気は、やがては小惑星や彗星に含まれる氷へと変化するでしょう」と研究チームを率いたWatson氏は話している。

また、NASAのジェット推進研究所(JPL)でスピッツァー計画にたずさわる科学者Michael Werner氏は、「今回の観測結果は、生命に欠かせない物質である水の移動という、恒星の進化におけるユニークな過程をとらえたことになります」と話している。

なお、検出された水の分析結果から、円盤の密度は1立方センチメートルあたり、水素分子が100億個程度であること、円盤の半径は地球・冥王星間より大きいこと、さらに円盤の温度が絶対温度で170度であることが明らかとなっている。

原始惑星系円盤

原始惑星系円盤は、もともと星間ガスが高密度に圧縮されながら回転して円盤状のガス雲となったもので、中央には原始星が形成される。原始惑星系円盤からは、しだいに直径10キロメートルほどの微惑星が形成され、これらが互いに衝突・合体を繰り返しながら、原始惑星へと成長する。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」“太陽系はどのようにして生まれた?”より抜粋)