「異質の流星」に注目、9月1日にぎょしゃ座流星群が突発出現の可能性

【2007年8月20日 SCIENCE@NASA

9月1日、「ぎょしゃ座流星群」が出現するかもしれない。長周期彗星が起源の珍しい流星群で、観測例もひじょうに少ない。予測される出現のピークは世界標準時間11時36分(日本時間20時36分)で、日本からは好条件とは言いがたいものの、明るくて長い流星が北東の地平線から現れる可能性がある。


(2006年11月にイタリアで撮影された流星の写真)

2006年11月にイタリアで撮影された流星の写真。ぎょしゃ流星群は、このような姿を見せると思われる。クリックで拡大(提供:Antonio Finazzi氏)

9月1日の東京の空

2007年9月1日午後10時(22時)、東京の空。放射点はぎょしゃ座の1等星カペラのあたりにあるが、予想ピーク時刻から1時間ほど経過しないと昇ってこない。さらに、月も出ている。しかし、明るい流星が多いことに賭け、予想時刻を過ぎても流星が出現してくれることに期待したい。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

ぎょしゃ座流星群の母天体は、1911年に発見されたキース彗星(C/1911 N1)。キース彗星の公転周期は2000年で、今回の出現は、紀元前82年にキース彗星が放出したダストが地球に降りそそぐことで起きる。流星群を起こす彗星は、ほとんどが公転周期200年以下の「短周期彗星」。ぎょしゃ座流星群は珍しいケースで、それだけに謎も多い。

過去100年だけで見ると、少なくとも1935年、1986年、1994年にはキース彗星の放出したダストが地球と遭遇している。そのたびにぎょしゃ座流星群の出現が観測されているものの、総じて関心が高いとはいえない。もっともよく観測されたのは1994年のことで、2人のベテラン観測者が米国カリフォルニア州で、明るく青緑色の流星を多数目撃している。暗い流星が少なく色鮮やかなのが特徴的だ。

短周期彗星は何度も太陽に接近し、表面はそのたびに加熱され変質している。それに対して、長い間「冷凍保存」された長周期彗星から放出される物質は粒が大きいとされており、そのため明るい流星の割合が多くなる。さらに、長周期彗星の起源は、「オールトの雲」と呼ばれる太陽系の最果てに存在が予測されている領域である。未知の世界からやってくる物質は、地球の大気圏に突入するときに予想もしなかった色を見せるかもしれない。

さて、フィンランドの天文学者E. Lyytinen氏とSETI研究所のP. Jenniskens氏によれば、出現のピークは世界標準時間9月1日11時36分(日本時間20時36分)で、継続時間は2時間ほどと予測されている。

一方、出現数の予測は難しい。NASAマーシャル・スペース・センターの流星物体環境研究所(MEO)のBill Cooke氏は、「私たちは、長周期彗星からやってくるちりと出会ったことがほとんどありません。何が起きても不思議ではないのです―不発に終わるかもしれませんし、美しい流星雨がみられるかもしれません」と話している。

残念ながら、日本国内では、ピークが予測される20時36分に放射点はまだ北東の地平線の下。しかし、放射点が地平線から昇ってくる21時以降には、経路の長い流星が出現する可能性もある。いずれにせよわからないことだらけの流星群なので、注目してみる価値はあるだろう。


「ぎょしゃ座流星群」に関する情報は月刊天文雑誌「星ナビ」2007年9月号の記事「太古の流星物質が降り注ぐ? 1時間に400個の流星雨出現となるか」でも紹介しています。