最遠方銀河の記録更新、赤方偏移8.68

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ハッブル宇宙望遠鏡や赤外線天文衛星スピッツァーなどによる観測で、132億年前の初期宇宙に存在するとみられる、これまでで最も遠い銀河が発見された。

【2015年9月8日 Caltech

銀河「EGS8p7」はハッブル宇宙望遠鏡(HST)と赤外線天文衛星「スピッツァー」の観測データから最遠銀河候補に挙げられた天体だ。米・ハワイのケック望遠鏡の分光装置「MOSFIRE」を使った追加観測で、その「赤方偏移」の値が8.68と求められた。赤方偏移は天体の距離の指標となるもので、値が大きいほどより初期の宇宙に存在する、つまり遠くにあることを表す。

赤方偏移が8.68というのは、EGS8p7が今から132億年前の宇宙にあることを示している。宇宙の年齢は138億歳なので、誕生から6億年後の宇宙にEGS8p7が存在しているということだ。

銀河「EGS8p7」
銀河「EGS8p7」。全体と右上はHST撮影、右下は「スピッツァー」撮影(提供: I. Labbé (Leiden University), NASA/ESA/JPL-Caltech)

宇宙誕生後5億年から10億年ごろに起こった「宇宙再電離」以前は、宇宙には中性水素原子の雲が存在し、その雲が若い天体からの放射を吸収してしまう。そのため、銀河中の星形成や若い星の存在を示す指標となるスペクトル中の特徴「ライマンα輝線」は、再電離以前の宇宙に存在するEGS8p7からは理論的に見えないはずだが、実際には検出されている。

一つの説明として、再電離が一様に起こらなかったという可能性が考えられている。これまでの観測でも、再電離プロセスにはむらがあったことが示唆されている。