2007年4月の星だより

【2007年4月1日 アストロアーツ】

4月になりました。新しい環境で、新しい生活がはじまる方も多いことでしょう。これから天文を趣味として始めてみようという方にちょうどよさそうな、注目の現象や天文学の話題を紹介します。


「一番星」を探そう

(金星、月、M45の接近)

4月20日午後7時30分、西の空のようす。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

これから天文をはじめるなら、やっぱり手軽な天体からスタートしたいものです。定番は月ですが、今の時期おすすめしたいのが宵の明星、金星です。日が沈んだ方向、地平線から30度ほどの高さに注目していれば、空が暗くなるにつれて見えてきます。実は同じころ、南西の空には全天一明るい恒星・シリウスが輝いているのですが、金星の明るさはシリウスのおよそ10倍。一番星を見つけたら、ほぼ間違いなく金星です。

ただし、いつでも金星が一番星というわけではありません。金星は地球の内側を回っている惑星なので、その位置はたえず変化していて、太陽と同じ方向にあって見えないこともあれば、明け方の空に見えることもあります(詳しくは「天文の基礎知識」をご覧ください)。これから5月、6月にかけてが、「宵の明星」あるいは「一番星」としての金星の見ごろです。こうした「シーズン」はおよそ600日ごとにめぐってきます。

青空から夕焼け、そして闇夜へと、色が移り変わる空を背景に輝く金星はそれだけでも印象的ですが、そこに別の天体が加われば格別です。12日にはおうし座のプレアデス星団(すばる)と、20日には三日月と並びます。どちらの接近劇も双眼鏡の視野に収まるほどのニアミスですから、見逃せません。カメラをお持ちなら、風景といっしょに撮影してみてはいかがでしょうか。露出時間を長めにするのがポイントです。

ところで、金星がどうしてこれほど明るいのかご存じでしょうか。もちろん、地球からの距離が近いせいもあるのですが、それに加えて太陽光を効率よく反射しているからです。地球のすぐ外側を回っていて、金星同様に地球へ近づく火星は、あたった太陽光の約17パーセントしか反射しません。それに対して、金星は約78パーセント。両者を比べると、火星の方が近いときでさえ金星の明るさが勝っています。ちなみに月の場合は約7パーセントしか反射しませんが、けた違いに近いおかげで圧倒的な明るさで輝いているというわけです。

金星が光を効率よく反射するのは、厚い大気に包まれているからです。地球でも、地面より雲の方が太陽光をよく反射していることは実感できると思いますが、金星は完全に雲に覆われています。ただし、金星の大気はほぼ二酸化炭素だけでできていて、90気圧もあり、地表温度はおよそ500度ですから生命とは無縁です。それでも、こうした特異な環境に加えて猛烈な風が吹くなど、金星大気には研究者の目を引きつける要素が盛りだくさん。現在、ヨーロッパの探査機「ビーナス・エクスプレス」が探査中です。興味がある方は最新情報に注目してみてください。

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「天文デビュー」はこの現象で

(火星食のようす)

東京から見た火星食(4月11日11時19分、潜入の瞬間)の再現(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

天体観察の定番といえば、流星があげられるでしょう。とくに今年は、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群が好条件です。その前に一度は流星群を体験しておきたいところ。毎年4月23日ごろに出現がピークを迎える「こと座流星群」を観測してみませんか。

こと座流星群の出現数はあまり多くはなく、1時間あたりおよそ10個です。案外これくらいの出現数の方が落ち着いて星空を眺められるかもしれません。しかも、ごくまれなことですが、突発的な出現を目撃できる可能性もあります。

望遠鏡をお持ちの方は、14日の火星食を観測してみましょう。白昼の青空で、火星が細い月に隠される現象です。このとき火星は1.0等ですが、面積がある天体なので1.0等の恒星と比べるとやや見つけにくいかもしれません。また、月が太陽に近いので決して望遠鏡を太陽に向けないようにしてください。

注目度が群を抜いて高い現象とは言えませんが、天体が昼間も夜と変わらない動きをしていることを実感する機会になるのではないでしょうか。土曜日の昼間に起きるので、サークルなどで集まって観測するのにも最適です。

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太陽系天体の新しい分類名、もうすぐ正式決定

すでに報道でご存じの方も多いと思いますが、太陽系天体に関する新しい用語の正式な日本語訳が、今月上旬に日本学術会議で正式に承認されます。これは2006年8月に国際天文連合で承認された「惑星の定義」などを受けて、話し合いが続けられていたものです。

とかく「冥王星の分類は準惑星」という点に注目が集まりがちですが、はたしてそれが本質的なポイントと言えるでしょうか。アストロアーツニュースでは、日本学術会議による正式発表の後で、要点を解説する予定です。もちろん、アストロアーツの「星空ガイド」コーナーなども順次表記を修正することになるでしょう。

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