国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト、立体ドームシアターが完成

【2007年3月20日 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

国立天文台の三鷹キャンパスに4D2U立体ドームシアターが完成した。直径10mの全天周ドームスクリーンには、最新の宇宙像が専用装置による3次元映像で映し出される。また、映像はリアルタイムに入力されたデータを反映し、自在に操作することも可能だ。


4次元デジタル宇宙立体ドームシアター外観の写真

4次元デジタル宇宙立体ドームシアター外観。クリックで拡大(提供:国立天文台)

渦巻銀河の形成

渦巻銀河の形成をシミュレーション中。数億年の変化が可視化される。クリックで拡大(提供:国立天文台)

月の起源の映像の一部

地球に天体が衝突し、破片から月が誕生するようすを再現している。クリックで拡大(提供:国立天文台)

国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U)は、空間的にも時間的にも膨大で実感しにくい宇宙を、立体映像で表現することで理解を進めようとする科学プロジェクトだ。専用計算機によるシミュレーションデータや、すばる望遠鏡などの最新データをもに、科学的な宇宙像を「4次元」デジタルコンテンツとして再構築している。ここで言う「4次元」とは、3次元空間に時間の1次元を加えた意味だ。

4D2Uプロジェクトは一般社会と専門家の双方に恩恵を与えることを目指している。宇宙の映像は当然学校教育で利用されることが考えられるが、楽しく、インパクトのある映像は、あらゆる層の人々へ教養や娯楽を提供できる可能性がある。一方、4D2Uは観測やシミュレーションのデータを研究者に提供する手段としても有用だ。現実には決して見ることのできない長い時間変化や立体的な視点が得られる上に、高速ネットワークを使えば遠隔地の研究者へもデータが提供できる。

今回完成したドームシアターは直径10mの全天周スクリーンを持つ。ドームへの投影に対応した立体投影を実現していて、特殊なメガネをつけることで迫力ある映像が楽しめる。さらに、プロジェクトが開発した4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」を使用し、解説者の操作やデータの入力によって映像を自在に操作することが可能だ。


ドームに投影された大規模構造のシミュレーション可視化立体映像

宇宙の大規模構造を投影。クリックで拡大(提供:国立天文台)

アストロアーツニュース編集部も発表の記者会見を取材し、実際に4D2U立体ドームシアターの映像を見ることができた。

「立体映像」という言葉から連想される以上に、4D2Uの映像には迫力がある。たとえば「宇宙の大規模構造」の映像が投影されるときは、内壁にはり付くように映るのではなく、文字どおりドームの中が銀河で満たされるのだ。さらに映像が動くため、目の前を宇宙が通り過ぎていくような感覚である。

発表に合わせて三鷹小学校の4年生が招待されたが、手にとるように目の前に広がる大宇宙に大歓声を上げながらショーを楽しんでいた。

なお、このプロジェクトは産学協同研究で、日本の2大プラネタリウムメーカー、コニカミノルタプラネタリウムと五藤光学研究所が参加している。国立天文台は、今後共同研究者とも協力し、世界中のプラネタリウムや博物館・科学館・学校などで4D2Uプロジェクトのコンテンツが活用され、さらには家庭でも気軽に楽しめるようになることを目指し、システムやコンテンツの普及に努めていくとのことだ。シアターの公開は4月28日から。当面は月1回程度の頻度で、映像作品や研究者による解説などを提供していく予定である。事前申し込みが必要なので4D2Uのホームページを参照のこと。迫力のある宇宙映像は天文ファン、宇宙ファンには必見だ。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>