新しい全国組織JPAの夢が語られた「全国プラネタリウム大会・名古屋2006」

【2006年12月8日 アストロアーツ】

12月4日〜6日、全国のプラネタリウム関係者が一同に会する「全国プラネタリウム大会・名古屋2006」が名古屋市科学館で開催された。大会の初日、日本を代表するプラネタリウム組織の名称が「日本プラネタリウム協議会(Japan Planetarium Association)」と決まった。


(連携を誓い合ったJPAの理事の写真)

連携を誓い合ったJPAの理事。左から北原政子JPS会長、菅原賢NPF会長、青木良夫AJPA会長。右は若宮崇令大会運営委員長。クリックで拡大

日本のプラネタリウムが団結し、さらなる発展へ向けて一歩を踏み出した。12月4〜6日に愛知県名古屋市にある名古屋市科学館で開催された「全国プラネタリウム大会・名古屋2006」は、現行のプラネタリウム関連団体である日本プラネタリウム協会(JPS)、日本プラネタリウム研究会(NPF)、全日本プラネタリウム連絡協議会(AJPA)が合流をめざして昨年6月に発足させた「新プラネタリウム会(仮称)」の初めての総会であり、全国からプラネタリウム関係者など総勢303名が一同に会して研究発表や実践報告などを行った。

大会の初日には、これまで仮の名称であった新プラネタリウム会の正式名を「日本プラネタリウム協議会(Japan Planetarium Association)」とすることが発表された。既存の3つの会はそれぞれ年度末をもって解散し、日本プラネタリウム協議会に移行して日本を代表するプラネタリウム組織となる。今大会の運営委員長であり3会の合流のために尽力された前川崎市青少年科学館館長の若宮崇令氏は、将来的には国内すべてのプラネタリウム施設の加入が理想であると呼びかけた。会員数は今のところ全国122施設。プラネタリウム施設だけでなく、関連企業や個人なども加入している。

(アストロアーツの発表の写真)

アストロアーツの発表「星空CGを携帯から全天周まで」。クリックで拡大

大会にはプラネタリウム施設や関連企業によるさまざまな取り組みが持ち寄られた。光学式とデジタル式の長所を生かすハイブリッド化を進める(株)五藤光学研究所による発表や、ドームいっぱいに広がるデジタル映像を紹介したコニカミノルタプラネタリウム(株)による発表、大平技研によるメガスター関連の発表など、最新の話題が結集し参加者の関心を集めていた。サンシャインスターライトドーム“満天”による発表では、星ナビ2006年12月号でプラネタリウムの話題第1位に輝いたKAGAYA Studioの「銀河鉄道の夜」のダイジェスト版が投影された。アストロアーツは「星空CGを携帯から全天周まで」と題した発表を行ったほか、会場の一角にブースを構えての製品のデモンストレーションや、星ナビ編集部によるポスター発表も行った。機器のリニューアルをテーマとした分科会では、平塚市博物館による「ステラナビゲータ ドームプロ」の導入事例も紹介された。


大会2日目には「これからのプラネタリウム」と題して市民フォーラムが開催され、プラネタリウム関係者約200名と一般市民約140名が集った。フォーラムでは名古屋市科学館のリニューアル計画について説明があり、これからのプラネタリウムの進むべき方向や可能性について意見が交わされた。計画案では、ドーム径35mという完成すれば世界最大のドーム径をもつプラネタリウムの建設が構想されている。ドーム径を大きくすることで、現在の20mドームよりも座席の位置による視差を小さくすることができ、より本物に近い星空を再現できるようになるという。同時に、全天周に動画を映し出すシステムの導入も予定されている。

(歴史あるツアイスIV型機の写真)

会場となった名古屋市立科学館のプラネタリウム。大会参加者が歴史あるツアイスIV型機を囲んで夢を語った。クリックで拡大

2日目の夜には、名古屋市科学館のプラネタリウムを長年牽引されてきた故・山田卓氏による投影が再現されるというサプライズもあった。名古屋市科学館では生解説のスタイルを貫いているが、17年前の「コーヒーカップの中の宇宙」という投影の中で、手紙文のやりとりの部分が録音で残されていたことが1年ほど前にわかり、山田氏の声による投影が同館の北原政子氏による演出でみごとに蘇った。天文分野には山田氏の影響を受けて育った方も多く、科学する心を育てるというプラネタリウムの原点をいま一度見つめなおすひとときとなった。


話題の尽きないプラネタリウム界であるが、解決すべき課題が多いのもまた事実である。老朽化が進んだ施設設備のリニューアルや、運営面では指定管理者制度をめぐる問題など、複数の施設が共通に抱える問題に関しては、組織を一本化して連携することの意義は大きい。各地のプラネタリウムを活性化するだけでなく、行政、学術分野、教育界、マスコミなど広く社会に対して発言力を高めていくことが期待される。

次回の大会は2007年6月、茨城県日立市にある日立シビックセンター科学館で開催される。

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