マーズ・グローバル・サーベイヤー、ミッション継続は困難

【2006年11月23日 NASA NEWS

数多い現役火星探査機の中でも最古参の、NASAの火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが、11月2日以降通信断絶状態にある。NASAはまだ希望は捨てないとして、原因究明と復旧に向けさまざまな手段を講じているが、残念ながら探査機の居場所さえわかっていない状態だ。


(マーズ・グローバル・サーベイヤーのイメージ画像)

マーズ・グローバル・サーベイヤーのイメージ画像(提供:NASA/JPL)

(マーズ・グローバル・サーベイヤーがとらえた火星の北極の極冠の画像)

マーズ・グローバル・サーベイヤーがとらえたとらえた火星の北極の極冠。10周年記念として公開されたもの。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Malin Space Science Systems )

マーズ・グローバル・サーベイヤーは、1996年11月7日に打ち上げられ、1997年9月11日に火星周回軌道に入った。探査ミッションの本番は1999年4月にはじまり、当初は2年を予定していた。しかし、探査機からもたらされた成果の大きさに、NASAは運用期間を延長し続けた。10月1日には4回目の延長期間に入ったばかりで、11月7日には打ち上げから10周年を迎えるはずだった。

長い間活躍してきたマーズ・グローバル・サーベイヤーはその分、満身創痍だ。ソーラーパネルやジャイロに故障があり、さらにはリアクションホイール(姿勢制御装置)も劣化するなどしている。それでも、火星探査機として史上最長の探査期間を更新し続けてきた。マーズ・グローバル・サーベイヤーは24万点にものぼる画像を火星から地球へ届け、大量のデータは、火星の研究だけでなく、後続の探査機にとっても重要なものとなった。現在火星上を走行する2台の探査車、オポチュニティーとスピリットの着陸地点を決定するときもマーズ・グローバル・サーベイヤーのデータが使われた。

異変が起きたのは、今年の11月2日。マーズ・グローバル・サーベイヤーに太陽電池パネルを動かす指令を送ったところ、エラー発生を知らせる信号が帰ってきたのである。以降マーズ・グローバル・サーベイヤーから届く電波には、探査機の観測結果や探査機自身に関するいかなるデータも含まれていなかった。その電波さえも断続的になり、11月5日を最後に途絶えてしまった。ソーラーパネルが回転しないため、通信に必要な電力を供給できない状況に陥っていると考えられている。通信復活のためにおよそ考えられ得る手立てが一通り試みられたが、今日まではっきりとした原因もわかっていない。

NASAのチームは、探査機との直接の交信が途絶えた後も、原因究明と通信復活への努力を続けている。その1つが、11月に本格探査を始めたばかりの最新鋭探査機、マーズ・リコナサンス・オービターによる捜索だが、超高解像度カメラを含む3種の観測装置のいずれにもマーズ・グローバル・サーベイヤーの姿はない。次の手段として現在試みられているのが、火星上のオポチュニティーにマーズ・グローバル・サーベイヤーからの信号を受信させることだ。

NASAは完全に諦めきってはいないとしながらも、驚くほど長い間継続してきたミッションの終わりがすぐそこまで来ていると認めざるを得ないようだ。NASAの火星探査計画の主任科学者Michael Meyer氏は「マーズ・グローバル・サーベイヤーは、あらゆる点でわれわれの期待を大きく上回る探査機でした」と話す。しかし、探査機が使命を終えてもまだ続きがある。「豊富な観測結果が今後何年もかけて分析されるにつれ、さらなる発見がもたらされるでしょう。」

《マーズ・グローバル・サーベイヤーの代表的な探査功績》

  • 液体の水がごく最近流れて形成されたと考えられる、峡谷の発見
  • 湿った環境でつくられる鉱物「赤鉄鉱(ヘマタイト)」の発見。オポチュニティーの着陸には赤鉄鉱が豊富な地点が選ばれた
  • 火星の全地形地図の作成
  • 火星に地球のような磁場が存在していたことをうかがわせる観測結果
  • 流れる水がつくる三角州を思わせる扇型の地形の発見
  • 火星を長期間探査することで、火星で進む気候変動の証拠と思われる変化をとらえた