11月9日、水星の太陽面通過

【2006年11月6日 国立天文台 アストロ・トピックス(253)

11月9日、水星が太陽の前面を横切る「太陽面通過」という現象が起こります。水星が黒い点となって太陽の前面を動いていく様子を、日本全国で観察することができます。


水星の太陽面通過の現象が起こるのは、11月9日の朝です。水星は太陽の南東側から太陽面上に入り込みます。水星が太陽面に接する「第1接触」と完全に太陽面に入り込む「第2接触」が起こる時刻には、日本では太陽がまだ地平線上に上っていないため、通過の様子を観察することはできません。その後、水星が太陽面を通過しつつある状態で、太陽と水星が地平線上に上ります。水星の出の時刻は、札幌で6時19.3分、東京で6時11.0分、那覇では6時42.0分です(その他の各地の時刻については、国立天文台暦計算室の日面経過の各地予報のページで調べることができます)。

水星は太陽面上を徐々に移動します。水星が太陽面の中心にもっとも近づくのは、6時42分頃です。それから水星はさらに移動し、西側から太陽面の外に出ていきます。水星が太陽面に内側から接する「第3接触」は9時9分頃、太陽面から完全に出終わる「第4接触」は9時10分頃です。

観察の方法ですが、太陽を肉眼・双眼鏡・望遠鏡で直接見るのはたいへん危険です。安全に観察するには、望遠鏡に太陽投影板を取り付けて、白い紙などに太陽の像を投影するのがよいでしょう。太陽面上での水星の見かけの大きさは、太陽の大きさ(視直径)のわずか200分の1ほどしかありませんので、見逃さないように注意してください。また、お近くの公開天文施設での観察会などがあれば、参加してみてはいかがでしょうか。インターネットによる中継もおこなわれるようですので、パソコンで観察するという方法もあるかもしれません。

前回、水星の太陽面通過が起こったのは、3年前の2003年5月7日でした。この先、2016年、2019年と水星の太陽面通過が起こりますが、どちらも日本では夜間のため、見ることができません。日本で次に水星の太陽面通過を見ることができるのは、26年後の2032年11月13日となります。このときには、第1接触・第2接触は観察が可能ですが、水星が太陽面上を通過している状態のまま日の入りとなります。

(注)「太陽面通過」は「日面経過」と呼ばれることもあります。どちらも同じ現象を指す言葉です。また、「第1接触」「第2接触」「第3接触」「第4接触」をそれぞれ「外触の始め」「内触の始め」「内触の終り」「外触の終り」と表現する場合があります。