11月8日明け方、今年最高条件の恒星食

【2006年11月2日 アストロアーツ】

小惑星による恒星食は頻繁に起こっていますが、11月8日明け方に起こる小惑星 (22) Kalliopeによる恒星食は、恒星が9.1等と比較的明るく、また東日本の広い地域で見られることから、今年最高条件の小惑星による恒星食と言えるものです。恒星が小惑星に隠されて暗くなる様子に注目しましょう。


(掩蔽帯の図)

掩蔽帯経路図と詳細データ。予報図中の破線は誤差(1σ)で、この内側であれば、68パーセントの確率で食が起こります。もし、期待に反して食が起こらなくとも、重要なデータとなります。観測の成果をぜひご報告ください。クリックで拡大(予報提供:Steve Preston (IOTA))

(広域星図)

(拡大星図)

TYC 1886-01206-1周辺の星図。広域(上)は6等級まで、拡大(下)は10等級まで表示。ともにクリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

11月8日明け方、小惑星 (22) Kalliopeによる9.1等星(TYC 1886-01206-1)の恒星食が、東日本の広い範囲で見られる。この現象は、2006年に国内で起こる恒星食で最高の観測条件だ。対象星が明るく、掩蔽帯も広く東日本を縦断するように覆っている。久しぶりの大きな成功を期待したい現象だ。

そしてなにより興味深いことは、この小惑星が衛星を持っていることだ。掩蔽帯から遠く離れた地域でも衛星による恒星食が起こるかもしれないので要注目だ。

この小惑星 (22) Kalliopeは、古くからよく観測され軌道精度も良好だ。今回の現象は、ちょうど小惑星が留の頃に当たっており、赤経方向の移動が少なく食が起きた場合の継続時間も最長30秒程度とかなり長めだ。

(22) Kalliopeの衛星は、2001年にハワイのCFH望遠鏡で発見され、Keck II望遠鏡で確認されている。それによると (22) Kalliope本体の推定直径180キロメートルに対して、衛星はおよそ40キロメートル。その間隔は1000キロメートルほどとされている。

この若い小惑星番号を持ちながら、恒星食の成功観測は世界的にも過去に1地点(2004年 仏)しかなく、この時の観測では衛星の影はかかっていない。このため今回の観測には特に期待が集まる。1地点で2度の食が起こる可能性も否定できない。通過(食なし)の観測も重要であるから、多くの方に観測にチャレンジして欲しい。なかでも掩蔽帯の東側に当たる、北海道地方の観測者が得られることを期待したい。

ただし、満月過ぎの明るい月が離角18度の近傍にあり、対象星の導入の妨げになるので、じゅうぶんな余裕を持って観測に臨みたい。

掲載している予報は執筆時点のもので、現象直前までに新たな小惑星の位置観測を追加してさらに改良される可能性がある。小惑星による恒星食の観測のデータからは、小惑星の位置や大きさ、形状などを求めることができる。より詳しい観測をしてみたい方は、星ナビ.comの「小惑星による恒星食」のページをご覧いただきたい。この現象に関するデータは以下のとおり。

小惑星 (22) Kalliopeによる恒星食
日時 2006年11月8日 4時49〜52分(日本標準時)
恒星 TYC 1886-01206-1 9.1等
赤経 06h 17m 54.067s 赤緯 +27゚ 11' 49.12" (J2000)
ふたご座とぎょしゃ座の境界付近
ぎょしゃ座44κ星の南 約 2゚ 22'
6' 東に HIP29955 (6.7等)がある
小惑星 (22) Kalliope 10.7等 推定直径 181km
減光 約1.8等、継続時間は最長30.1秒
掩蔽帯 関東地方東部、東北地方、北海道西部
ランク 99ポイント

ランク=減光の観測される可能性を示す指標。高ポイントほど確率が高い。

(※本ニュースは、せんだい宇宙館の早水勉氏よりいただいたコメントをもとに作成しました。)