ハロウィーン画像〜天の川銀河に横たわるへび〜

【2006年10月30日 Spitzer Press Release

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーによるハロウィーン画像が公開された。画像にとらえられているのは、天の川銀河に横たわる巨大な雲で、われわれから約1万1千光年離れたいて座にある。まるで蛇か龍を思わせる姿をしたこの雲の大きさは、太陽系10個ほどをすっぽりと飲み込んでしまうサイズだ。


(いて座の暗黒星雲とその周辺の画像)

いて座の暗黒星雲とその周辺。左上が蛇のような形をした暗い雲、左下にある赤い円形をした天体は超新星残骸。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/S. Carey (SSC/Caltech))

(いて座の暗黒星雲の拡大画像)

いて座の暗黒星雲の拡大画像(蛇を思わせる雲のシルエットがわかりやすいように手が加えられている)。クリックで動画へリンク(提供:NASA/JPL-Caltech/S. Carey (SSC/Caltech))

ハロウィーン画像として公開されたのは、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーがとらえたた天の川銀河に横たわる巨大な雲。その正体は、ひじょうに厚いちりだ。もし人間がこのような雲の中に入りこめば、周辺は真っ暗闇で、空に広がっているはずの星さえも見ることはできない。太陽系10個がすっぽり収まる暗闇の化け物として、ハロウィーンにはぴったりといったところだろう。

このような巨大な雲をスピッツァーが観測するのは、形成中の大質量星を探すための格好の場所だからだ。可視光ではその姿を見ることはできないが、スピッツァーの赤外線の眼は、このような低温の天体や領域の観測に適しているのである。

実際、スピッツァーがとらえたこの画像には、さまざまな星の姿が映し出されている。黄色やオレンジ色の点は、今まさに一人前の星として姿を現そうとしている大質量星。蛇のお腹の辺りに位置する赤く明るい点は、われわれの太陽の20から50倍ほどの質量をもった巨大な星の卵だ。

このように、大質量星の形成に関する情報を得ることで、今後は、大きな質量を持った星が低質量の恒星であるわれわれの太陽と同じような形成過程を経るのかどうかなど、明らかにされることが期待されている。