【速報】スワン彗星が大増光、4等台に

【2006年10月25日 アストロアーツ、IAUC 8766】10月26日更新

5月のシュワスマン・ワハマン彗星を上回り、2005年1月のマックホルツ彗星以来となる明るい彗星の登場です。6〜7等台だったスワン彗星(C/2006 M4)がアウトバーストを起こし、4等台になりました。これは肉眼でも観測できる明るさで、双眼鏡では彗星らしい姿を確認できます。現在、スワン彗星は夕方北西の空で比較的見やすい位置にあるので見逃せません。


スワン彗星の写真

アウトバースト後の姿をとらえた。極めて明るく、北東に延びる尾の複雑な構造が見られる。CCD全光度は5.0等。クリックで拡大
撮影/門田健一、撮影地/埼玉県上尾市
撮影日時/2006年10月25日17時54分(JST)
4秒露出×64枚の画像をステライメージ Ver.5でメトカーフコンポジット
撮影機材/口径25cmF5反射+冷却CCD

スワン彗星は太陽観測探査機SOHOの太陽風異方性検出装置(SWAN)が6月下旬に撮影した画像の中から見つかった彗星です。しばらく太陽の近くを通った後、9月下旬から明け方の東空で見えるようになりました。

当初、スワン彗星の明るさは最大で8等級止まりと予想されていましたが、9月の時点で早くも7等台まで増光して話題となっていました。その後、10月には夕方北西の空で見やすい位置へ移動して、6等台になりました。すでに予想を上回る明るさとなっていたスワン彗星は、ここ数日の間にアウトバーストを起こし、肉眼彗星にまでなりました。おもな観測例を紹介します(以下、時刻はすべて世界時)。

アメリカのPhillip J. Creed 氏は10月22.02日の時点で彗星が6.2等の恒星状に見えていたことを報告しています。10月23.76日にはオランダのPeter Bus氏が10×56(5.6センチメートル10倍)双眼鏡を使って観測を行い、彗星が8分角の広がりを持っていること、長さ0.2度の尾があること、明るさが5.8等であることを確認しました。同氏は10月24.75日にも観測を行い、明るさが4.4等まで急増光したことを報告しています。

ベルギーのAlfons Diepvens氏は10月24.77日に20×50(5センチメートル20倍)双眼鏡で4等に見えたことを報告。さらに肉眼でも観測できたとのことです。スペインのJuan Jose Gonzalez 氏も10月24.82日に肉眼で観測し、4.3等だったと報告しています。

東京渋谷のアストロアーツ本社屋上でもスワン彗星を確認

25日夕方18時すぎ(日本時間)に、アストロアーツニュース編集部でも20×60(6センチメートル20倍)および15×50(5センチメートル15倍)の双眼鏡でスワン彗星をとらえました。すぐ北に新宿副都心が見える明るい場所での観測でしたが、彗星らしい姿が驚くほどはっきり見えています。

コマは明瞭で、大きさは他の観測報告同様、10分角弱という印象です。ひじょうに短いながらも、尾が伸びているのもわかりました。じゅうぶん暗い空での観測なら、間違いなく肉眼で見えるでしょう。

スワン彗星は、日本でも日没後北西の空で見ることができます。久しぶりの明るい彗星なので、ぜひ観測に挑戦してみてください。アストロアーツニュースでは、今後詳しい情報が入り次第、随時その内容をお伝えします。

スワン彗星の位置(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

<参照>

  • 星ナビ.com:
    • 月刊星ナビ 10月号(吉田誠一の視天67「“職人”が見つけ出したスワン彗星 三彗星発見物語(後編)」 )、Observer's NAVI(117年ぶりの再発見)
    • 月刊星ナビ 9月号(吉田誠一の視天66「バーナード第2彗星が急増光 三彗星発見物語(前編)」 )、Observer's NAVI(明るい彗星が目白押し)
  • IAU Circular No. 8766 (2006 Oct 25): C/2006 M4
  • 国立天文台 アストロトピックス(252): 明るくなった「スワン彗星」

<関連リンク>

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