惑星や、ちりの円盤と共存する褐色矮星

【2006年9月27日 Penn State Berly College of Science

NASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーによる観測で、 暗い褐色矮星の発見が相次いだ。ただでさえ見つけるのが困難な褐色矮星だが、興味深いのは、2つの褐色矮星が恒星の周りを回っていて、1つは惑星と、もう1つはちりの円盤と共存していることだ。


(HD 3651とペガスス座HNの画像)

HD 3651(左)とペガスス座HN(右)。白い円内が褐色矮星HD 3651 Bとペガスス座HN B。クリックで拡大(以下同)(提供:NASA / JPL-Caltech / K. Luhman, Penn State / B. Patten, Harvard-Smithsonian)

(恒星HD 3651とその惑星および褐色矮星の想像図)

恒星HD 3651とその惑星および褐色矮星の想像図(提供:NASA / JPL-Caltech / T. Pyle (SSC))

ペンシルヴァニア州立大学のKevin Luhman氏率いるアメリカの研究グループは、スピッツァーを使った観測で、2つの「T型褐色矮星」を発見した。T型褐色矮星は褐色矮星(解説参照)の中でももっとも表面温度が低いタイプである。

褐色矮星の温度は、恒星に比べて圧倒的に低い。生まれたての褐色矮星でも数千度で、時間の経過とともにさらに冷えていく。そのような冷たい天体はほとんど可視光で輝くことはないので、観測は困難であり、初めて褐色矮星と確認できる天体が発見されたのは、わずか10年ほど前のことだ。その褐色矮星の中でもT型褐色矮星は一番冷たくて発見が難しい。温度が低い天体からの赤外線を観測することが得意なスピッツァーにとっても、T型褐色矮星を発見するのは初めてのことだ。

発見されたうちの1つ目の褐色矮星、HD 3651 Bは、うお座の方向36光年の距離にある、太陽よりやや小さい恒星HD 3651の周りを回っている。質量は木星の50倍程度だが、HD 3651からの距離は太陽から冥王星までの10倍と、かなり遠い。特筆すべきは、HD 3651にはすでに惑星が発見されていることだ。この惑星は土星ほどの質量を持ち、太陽から見た水星よりもHD 3651に近い軌道を回っている。その軌道の形は極端な楕円であることがわかっていて、以前から「外側に潜む天体が重力で引っ張っているのではないか」と指摘されていた。

HD 3651の惑星と同じように、何者かに引っ張られているかのごとく伸びた楕円軌道を回る系外惑星は、珍しくない。HD 3651 Bの発見から、T型褐色矮星が案外多くの惑星系に紛れて、内側の惑星に影響を与えている可能性が示唆される。

2つ目に発見された褐色矮星、HN Peg Bは、60光年離れた恒星ペガスス座HNの周りを回る。ペガスス座HNの年齢は3億歳と見積もられていて、褐色矮星ペガスス座HN Bも同じ星間物質の中から同時に生まれたと考えられている。大抵の褐色矮星の年齢は数十億歳であり、ペガスス座HN Bが確かに3億歳であるとすれば、比較的若いといえる。この点から、褐色矮星の進化の初期段階を明らかにするために役立つ情報がもたらされると期待されている。

さらに、ペガスス座HNの周りにはちりや岩が取り残されて、円盤状に分布していることもわかっている。T型褐色矮星と同じように、恒星を取り巻くちりの円盤も観測が難しい。その意味で、両方がそろったペガスス座HNは、研究者にとってわくわくするような恒星系であるらしい。

褐色矮星

自ら恒星として核融合反応を起こすほど質量をもたない星のこと。太陽質量の10分の1より小さく1000分の1より大きいクラスの天体で、可視光域では光を出していない。最新デジタル宇宙大百科」より抜粋)

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>