観測史上最大、しかしコルクより軽い系外惑星

【2006年9月21日 CfA Press Release

惑星の大きさを見積もることも可能な「トランジット法」によって、11例目の系外惑星HAT-P-1が発見された。HAT-P-1はサイズが明らかなものとしては最大の系外惑星だが、一方でコルク以下の密度しかない奇妙な天体でもある。


(HAT-P-1と親星の想像図)

HAT-P-1と親星の想像図。クリックで拡大(提供:David A. Aguilar (CfA) )

全天を自動的に観測する望遠鏡群HATによって、とかげ座の方向450光年の距離に系外惑星「HAT-P-1」が発見された。

HAT-P-1の親星は連星系ADS 16402の片割れで、太陽とよく似た恒星だ。HAT-P-1は4.5日周期で、地球−太陽間のわずか20分の1という距離の軌道を回っている。地球から見ると、1周ごとにHAT-P-1が恒星の前を通るため、恒星の明るさは2時間以上にわたって1.5パーセントほど暗くなる。その様子を、HATがとらえたのだ。

このように系外惑星が親星の前を通る様子をとらえる方法を「トランジット法」と呼び、11個の系外惑星が発見されている。「トランジット法」の利点は系外惑星の大きさを見積もることができる点にある。HAT-P-1の半径は、大きさが明らかにされた系外惑星の中でもっとも大きい、木星の1.38倍であることがわかった。

一方、惑星の重力によって親星がふらつく様子を観測することで、系外惑星の質量を求めることもできる。驚くべき事に、HAT-P-1の質量は木星の約半分しかなかった。われわれの太陽系の土星は密度が小さく、仮に十分に大きな水槽があれば、浮かんでしまうほどであることで有名だ。しかし、HAT-P-1の密度は土星よりも小さく、同じサイズのコルクよりも軽い。比重は、水のたった4分の1である。

通常の惑星構造モデルをHAT-P-1に当てはめて、測定された質量から半径を理論的に計算すると、実際の半径はそれよりも24パーセントも大きい。トランジット法で大きさが求められた11個の惑星のうち、HAT-P-1のように異常に膨れた惑星は、「HD 209458b」(理論値より20パーセント大きい)を加えた2つしか存在しない。

ガスのかたまりである惑星は、暖められるほど大きくなる。しかしどの惑星も親星のすぐ近くを回っているのに、膨れあがっているのが11個中2個しかないということは、恒星からの熱は関係ない。惑星の内部で、余計な熱が生まれているはずだ。では、どうやってその熱を作り出すのだろうか。

1つの仮説は、天王星のように自転軸が大きく傾いているからというものだ。横倒しになりながら恒星のすぐ近くを公転すると、内部は潮汐力によって加熱される。しかし、そもそも惑星が横倒しに自転すること自体、ひじょうにまれであると指摘されている。

もう1つ、極端な楕円軌道を回ることで、やはり潮汐力が作用して加熱されるのではないかという仮説がある。しかし、HD 209458bの観測からはそのような軌道は考えられない。HAT-P-1について検証が続けられているが、仮にHAT-P-1に当てはまったとしても、この仮説ですべては説明できないことに変わりはない。謎は膨らんだままだ。