生まれてたった数秒のブラックホールを観測

【2005年9月21日 NASA News

2004年11月に打ち上げられたNASAのスイフト衛星は、これまで数々の超新星爆発をとらえてきた。どうやら、従来のイメージと違い超新星「爆発」は一発で終わらず、数回にわたり爆発を繰り返すようだ。これは、超新星爆発で生まれたブラックホールが引き起こす現象らしい。

(スイフト衛星によって観測された爆発を数回繰り返すブラックホールのシミュレーション動画の一部

スイフト衛星によって観測された爆発を数回起こすブラックホールのシミュレーション動画の一部(動画は、リリース元にて公開)(提供:NASA/GSFC/Dana Berry)

ガンマ(γ)線バーストは宇宙でもっとも激しい爆発現象だが、その原因と見られるもののひとつは、極超新星(解説参照)であり、しばしば極超新星の先駆けとしてガンマ線バーストが観測されている。スイフト衛星はガンマ線バーストを検出して数分以内に望遠鏡を向け、詳しく観測することができるのが特徴だ。これは、極超新星爆発のごく初期−つまり、生まれたてのブラックホールがどのようにふるまうのかを調べることが可能だということだ。

これまで考えられてきたブラックホール誕生のシナリオは単純なものであった。ガンマ線バーストを伴う最初の爆発の後は、アフターグローと呼ばれる、残った燃えかすが放射するX線や可視光の残光しか見えないと思われていた。しかし、スイフト衛星が観測した極超新星に由来すると見られるガンマ線バーストのうち、半分近くで複数回の爆発が観測されたのだ。最初の爆発に伴うガンマ線バーストが観測されてから、2回目以降の爆発を意味するX線のパルスがとらえられたのである。数分以内に、最多で4回の爆発が起きていた。

研究者によれば、これは超新星爆発で生まれたブラックホールがすぐに活動を始めた結果であるとのことだ。物質がブラックホールに落ち込む過程、あるいは吹き飛ばされたガスと吸い込まれるガスが衝突することによって、X線が放出されるという。いずれにせよ複雑な現象が起きているのは確かで、今後の研究が待たれる。少なくともわかってきたのは、ブラックホールの赤ちゃんは人間同様、暴れたり泣き叫んだりしながらこの世に生を受けるということだ。そしてもちろん、食欲旺盛な点でも似ている。

なお、リリース元では、爆発を数回繰り返すブラックホールのシミュレーション動画が公開されている。


極超新星 : 膨張速度が数万km/sと、通常の超新星(〜10000km/s以下)に比べてたいへん大きな超新星。爆発の力学エネルギーが1桁大きいことになる。中心ではブラックホールが形成されるとも考えられている。また、γ線バーストとの関連が言われている。典型例は、超新星2002apなど。(最新デジタル宇宙大百科より