「若い、熱い、虎縞」−土星の衛星・エンケラドスの活発な地質活動

【2005年9月17日 JPL News Releases

土星探査機カッシーニが、土星の衛星・エンケラドスに平行に走る複数の巨大なひび割れを発見した。この地形の年代は10〜1000年程度と、とても若いと考えられており、その形状から「タイガーストライプ(虎縞)」との通称がつけられた。

(エンケラドスで発見された巨大なひび割れた地形の画像) (エンケラドスと英国のサイズの比較画像)

(上)エンケラドスで発見された巨大なひび割れた地形の画像。吹き出したばかりの「新鮮な」氷の存在が水色で示されている。(提供:NASA/JPL/University of Arizona )(下)エンケラドス(直径505km)と英国のサイズの比較画像。(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)ともにクリックで拡大

エンケラドスの南極付近にあるこのひび割れ地形は、長さ130キロメートルであり、40キロメートル間隔でいくつかがほぼ平行に走っている。このひびが形成されたのは10〜1000年前と見られるが、これは以前示された、南極において10年程前に地質活動が起きていたという報告を裏付けるものだ。これらの巨大なひび割れは、通気孔のような活動を見せており、蒸気や氷(以下、すべて水の氷)の結晶を吹き出している。こうした「新鮮な」氷で表面が塗り直されていく様や、表面の氷の年代は、次に述べるように、詳細に調べられるようになった。

カッシーニの可視・赤外線分光観測によって、エンケラドス上の氷には2種類の形態が存在することが明らかになった。それは、新鮮で結晶構造を持つ氷と、宇宙線などの放射線にさらされアモルファス(非晶質)になった氷である。このプロセスは数十年以内に起きると考えられている。タイガーストライプの周りの氷は結晶質なので、この地形自体、ひじょうに若いに違いない。エンケラドスは、進化を続け、たえず変化しているといえる。ちなみに、この活動のおかげでエンケラドスは太陽系天体有数の、反射率の高い表面を持つ衛星となっている。

また、ひび割れは、エンケラドスの南極に見られるどの地形よりも高温であることもカッシーニの探査ですでに明らかになっている。そして、あらゆる観測機器の調査から見ても、蒸気や氷の結晶は確かにこの「熱い」南極、とりわけタイガーストライプ、を起源としているらしい。

太陽系天体で内部活動が見られる天体としては、他には木星の衛星・イオの火山や、海王星の衛星・トリトンが知られている。それらと比べても一回り小さい(直径505キロメートル)エンケラドスでこうした活動を起こすだけの熱を維持するのは、非常に難しいと考えられている。この謎を巡る議論も始まったばかりで、これから熱くなりそうだ。