すばる望遠鏡、宇宙最遠の巨大爆発をとらえる

【2005年9月14日 国立天文台 アストロ・トピックス(139)

東京工業大学、国立天文台などからなる研究チーム「すばるGRBチーム(()」は、すばる望遠鏡によって、宇宙の最も遠方で発生した巨大爆発現象の距離を測ることに成功しました。

(すばる望遠鏡によって得られた GRB050904の残光の画像)

すばる望遠鏡によって得られた GRB050904の残光の画像。クリックで拡大(提供:国立天文台)

この爆発現象はガンマ(γ)線バーストと呼ばれ、大質量星が崩壊してブラックホールが作られるときに発生すると考えられています。2005年9月4日10時51分(日本時間)に、アメリカのガンマ線天文衛星スイフトによって、うお座の方向にあるガンマ線バーストが検出され、その正確な位置が全世界の研究者に伝えられました。GRB050904と命名された、このガンマ線バーストの位置に各国の望遠鏡が向けられ、次第に弱くなる残光が観測されました。たとえば、東京大学がハワイ大学の協力を得てマウイ島に設置した口径2メートルのマグナム望遠鏡でも観測が行われ、極めて遠方にあることを示唆する結果を得ていました。

すばるGRBチームでは、ハワイ時間で9月6日の晩(日本時間では9月7日)に、この残光を微光天体撮像分光装置(FOCAS)という装置を用い、4時間の露光によって可視光から近赤外線領域にわたる高品質のスペクトル(波長別の光の強さ)を得て、正確な距離の測定に成功しました。その結果、距離は 128億光年でした。これは、それまでの記録である123億光年を大幅に破る最遠記録です。たった5億光年の差ですが、宇宙の始まり(ビッグバン)からの時間でみれば、これまでの最遠記録は14億年後、 今回のものは9億年後となり、これまでに比べての6割も宇宙の始まりに近づいたことになります。これまで、人類が観測したもっとも遠方の天体は、すばる望遠鏡によって発見された若い銀河ですが、これと比べても約5000万光年近いだけです。

今回の観測結果は、ガンマ線バーストの明るさを利用することで、今後さらに遠方、つまり宇宙創生の時代を探ることができる可能性を示唆しています。近い将来、ガンマ線バーストが観測できる宇宙最遠の天体となる日がくるかもしれません。ガンマ線バーストには、これからも目が離せません。

(注): 東京工業大学、国立天文台、青山学院大学、京都大学、理化学研究所、東京大学、広島大学、カリフォルニア大の研究者によるチームです。


ガンマ(γ)線バースト :1967年、アメリカの核実験監視衛星によって偶然発見された現象。数秒から数十秒の突発的なガンマ線のバーストが全天のあちこちで観測されるもの。繰り返し起こるタイプと、1回のみ起こるタイプがある。1997年に、ガンマ線バーストの位置に、X線・可視光・電波で光り、急速減光していく天体 = 残光が発見され、ガンマ線バースト研究は一気に進んだ。(最新デジタル宇宙大百科より