小惑星エロスには、なぜ小クレーターが少ないのか

【2004年12月9日 UA News

小惑星エロスに見られる小さなクレーターの数は、専門家の予測をはるかに下回りひじょうに少ない。この謎について、アリゾナ大学の専門家が答えを出した。同研究チームのシミュレーション分析によれば、1、2m程度の小さな天体がエロスに衝突する際に起きる地震性振動によって、100m以下の小さなクレーターの90パーセントがかき消されてしまうということだ。

(エロスの画像)

2000年に小惑星探査機NEARが200kmの距離から捉えたエロス(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Lab)

小惑星エロスは、長さ30km、幅13km程度ととても小さく、体積や重力も小さい。そのため、天体衝突の衝撃による振動で、表面を覆っている土がすぐに不安定な状態になってしまうようだ。表面の岩とちりの層はゆっくりと移動するが、このようなことを繰り返すうちに、多くのクレーターは時間をかけてかき消されていくのである。この内容は、NASAの小惑星探査機NEARによる観測結果と一致するものとなっている。専門家による当初の予測は、1平方キロメートルあたり20mのクレーターが400個だったが、実際には平均40個ほどしかない。

またモデル分析からは、エロスの内部構造についても、NEARミッションの観測から予想されてきた内容を支持するような結果が得られている。内部構造を理解しておくことは、今後万が一地球が小惑星衝突の威勢にさらされた際に危険を回避するための重要な示唆を与えるものとなるだろう。