ハッブル宇宙望遠鏡がわずか5億歳の銀河を捉えた

【2004年12月3日 Hubble Newscenter

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、今まででもっとも若い可能性がある銀河の年齢計測に挑んだ。観測されたのはI Zwicky 18というおおぐま座の矮小銀河で、われわれから4500万光年の距離に位置している。観測結果から得られた年齢は5億歳で、天の川銀河や多くの典型的な銀河の年齢120億歳程度に比べるとひじょうに若い。

(I Zwicky 18の画像)

I Zwicky 18。クリックで公開(提供:NASA/ESA、Y. Izotov(Main Astroomical Observatory, Kyiv, UA) and T. Thuan (University of Virginia))

I Zwicky 18の年齢が若いことについては、化学的組成を根拠に長年指摘され続けてきた。あまりにかすかで小さいために高感度の望遠鏡による観測が待たれていたが、ついに今回、ハッブル宇宙望遠鏡の目が向けられることとなったのだ。I Zwicky 18の星全体についての観測から明らかになったのは、5億歳というひじょうに若い銀河の年齢だ。

つまり、I Zwicky 18は宇宙誕生から130億年もの間、爆発的な星形成をせず、水素とヘリウムを含んだ冷たいガスのまま存在し続けてきたことになる。なぜそのような状態を維持できたのかは謎だ。また、この銀河が4500万光年という(宇宙スケールで)ひじょうに近い距離に発見されたのも、珍しいケースである。若い銀河はビッグバン後の数十億年間に形成されたと考えることが多く、そのため若い銀河が見つかるのは、たいてい遠方の宇宙なのだ。

I Zwicky 18は、大きな銀河を作る元となった宇宙初期の矮小銀河のサンプルといえるだろう。われわれの天の川銀河のような大きな銀河は、ここまで成長する間に、小さな銀河同士の衝突や合体による成長を繰り返してきたと考えられている。I Zwicky 18を構成しているのは、ビッグバン後に作られた2つの軽い物質である水素とヘリウムがほとんどで、重元素は極めて少ない。このことから、この矮小銀河のガスからは星が作られてはいなかったと推測される。

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