地球にニアミスした小惑星2004 FU162

【2004年8月26日 国立天文台 アストロ・トピックス(42)

小惑星センターが発行する小惑星電子回報(MPEC)2004-Q22号によると、2004年3月31日(世界時)に、地球中心からわずか1万3000キロメートル、表面からは約7000キロメートルのところを通り過ぎた天体があったことが報告されています。

この天体はアメリカ・リンカーン研究所がおこなっている、地球に近づく小天体を探す観測「リニアプロジェクト(LINEAR=Lincoln-Laboratory Near Earth Asterid)」で発見されました。44分間におこなわれた4つの観測が見つかり、小惑星センターに報告されましたのですが、すでにその天体が昼間の空にあったため、その後の追跡観測ができませんでした。

しかし、アメリカのジェット推進研究所(JPL)のチェスリー(S. R. Chesley)により、軌道計算がおこなわれ、2004年3月31日15時30分頃、地球中心からたった1万3000キロメートルのところを通ったことが判明したのです。

短い観測時間ながら、軌道が求められたことで、この天体には仮符号「2004 FU162」が与えられました。通常、小惑星の仮符号は2晩の観測がないと付けられませんが、今回は地球に異常にニアミスした天体ということで特別に付けられたものと思われます。

これまでの地球へのニアミスの最接近記録は、2004年3月18日に4万キロメートルまで接近した「2004 FH」でしたが、今回はこれを大きく上回りました。この天体は今回のニアミスで、軌道が大きく変わってしまいましたし、観測期間が短く予報の精度は低いですが、2007年3月末頃、また地球へ接近する可能性が指摘されています。ただ、この天体の大きさはせいぜい8メートル程度と推定されますので、仮に地球に衝突したとしても、空気中でバラバラになってしまい、地上に大きな被害をもたらすことはありません。

今後もこのようなニアミス天体は続々と見つかってくるでしょう。

小天体の地球接近番付(2004年8月24日現在)
接近距離接近日天体名推定直径
1万3000km 2004.03.31 2004 FU162 8m
4万9000km 2004.03.18 2004 FH 30m
8万4000km 2003.09.27 2003 SQ222 5m
10万8000km 1994.12.09 1994 XM1 12m
11万8000km 2002.12.11 2002 XV90 45m
12万0000km 2002.06.14 2002 MN 95m
14万8000km 1993.05.201993 KA2 7m
14万8000km 2003.12.06 2003 XJ7 35m
16万2000km 2003.09.19 2003 SW130 7m
16万6000km 2004.07.16 2004 OD4 20m

※この情報は鳥取県さじアストロパークの織部隆明(おりべたかあき)さんより、いただきました。


小惑星は、おもに火星と木星との間に軌道を持つ小さな天体で、もっとも大きいセレスでも直径約1000kmと、地球の衛星である月の3分の1以下である。軌道の判明している小惑星は10万個以上もあるが、そのほとんどは直径数kmから数十km程度で、直径250kmを超えるものは十数個ほどである。(最新デジタル宇宙大百科より)<2005年7月4日更新分>

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