東大、理研グループ、中間質量ブラックホール形成のメカニズムを解明

【2004年4月17日 東京大学理学系研究科 牧野研究室

東京大学、理化学研究所を中心とする国際共同研究グループが、スターバースト銀河M82に発見された太陽の質量の1000倍近くの質量を持つ「中間質量ブラックホール」がどのように形成されたかをコンピュータシミュレーションによって解明した。発表によれば、大質量星が暴走的に合体してできた超大質量星が元になったと考えられるということだ。

(すばる望遠鏡によるM82)

すばる望遠鏡によるM82(提供:国立天文台/NHK)

近年まで、ブラックホールとしては太陽の質量の10倍前後の恒星質量ブラックホールと、銀河の中心にあり太陽の100万倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールしか知られていなかったが、2000年にM82に太陽の1000倍程度の質量を持つ中間質量ブラックホールが発見された。この発見は、新種のブラックホールという点だけでなく、超大質量ブラックホールの形成メカニズムの理解の手がかりとなる可能性が高いという意味でもひじょうに注目されたものである。

この発見を受け同グループは、中間質量ブラックホールの形成メカニズムとして、大質量星の暴走的な合体によって形成される超大質量星が元になるというシナリオを2001年に提案した。しかし、M82の中間質量ブラックホールを持つ星団がどのような星からできているかが観測から明らかになっていなかったため、このシナリオどおりのことが実際に起こるかどうかは謎であったのだ。

2003年、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック望遠鏡による観測で、この星団を含むM82のスターバースト領域のいくつかの星団の明るさ、大きさや星の速度分布が明らかにされた。これらの観測データを使い、東大の開発した多体問題専用計算機GRAPE-6によって大規模なシミュレーションが行われ、星団の進化のようすが調べられたのである。

シミュレーションの結果、中間質量ブラックホールがある星団の場合には星団の中心で大質量星の暴走的合体が起こり、太陽質量の1000倍程度の超大質量星が形成されることがわかった。このような超大質量星が最終的にブラックホールへと進化し、観測されるような中間質量ブラックホールが形成されたと考えられる。中間質量ブラックホールの形成メカニズムとして、大質量星の暴走的な合体がもっとも自然なものであるということだ。

専門家によれば、今回の結果は、理論的に信頼できる中間質量ブラックホールの形成メカニズムを提供したと同時に、銀河形成初期にどうやって大質量ブラックホールができたかという謎の理解にもつながる重要なものだということだ。今後、観測、理論の両面から中間質量ブラックホールに関する理解がさらに進むことを期待したい。