明け方の東の低空に見え始めたリニア彗星(C/2002 T7)

【2004年4月13日 国立天文台 アストロ・トピックス(5)

この春に肉眼で見える可能性のある二大彗星のひとつ、リニア彗星(C/2002 T7 LINEAR)が、明け方の東の地平線に顔を出しはじめ、日本のアマチュア天文家によって観測がされるようになりました。

リニア彗星は、2002年10月にアメリカ・リンカーン研究所の「リニアプロジェクト(LINEAR=Lincoln-Laboratory Near Earth Asterid)」のチームが発見した彗星です。発見された時の太陽からの距離が約10億キロメートルと遠方だったことから、かなり大型の彗星ではないか、と考えられました。また、4月23日には太陽に9千万キロメートルまで近づき、日本でも5月下旬には肉眼で見えるかもしれないと期待されています(国立天文台・天文ニュース 598)。また、昨年9月のすばる望遠鏡の観測によって、彗星の核の近傍で、氷の粒子が直接検出されるなど、天文学的な成果も上がっています(国立天文台 アストロ・トピックス 4)。

リニア彗星は、日本からは4月末に日の出前の東の低空で一時的に見られる可能性があります。地平線からの高さが高くなって見やすいという条件でいえば、5月下旬の日没後の南西の夜空に現れるときの方がよいのですが、彗星本体の明るさなどを考えると、4月末の方が明るいかもしれない、という予測もなされています。明け方の観測好機は4月21日頃から5月1日頃までとなりますが、なにしろ薄明開始時に高度が2〜3度という超低空になりますから、地平線まで何もない視界が開けた場所と天気、特に低空の透明度に恵まれないと難しいでしょう。

(リニア彗星C/2002 T7の画像)

リニア彗星C/2002 T7。クリックで拡大(撮影:アストロアーツ 門田健一、2004年4月10日4時25分、18cm反射望遠鏡 + 冷却CCDカメラ)

こういった低空での彗星の観測を継続している埼玉県在住のアマチュア天文家、門田健一(かどたけんいち)さんは、4月10日早朝、4時25分、待望のリニア彗星の姿を18センチメートル反射望遠鏡に冷却CCDカメラをつけて、その姿を撮するのに成功しました。透明度が悪く、雲の通過の合間をぬった観測でしたが、リニア彗星は薄明中の高度約4度あまりの場所に約5等星の明るさで輝いていました。また、群馬県在住のアマチュア天文家・小島卓雄(こじまたくお)さんも4月6日および10日、12日と撮影に成功しています。リニア彗星は4月23日の近日点通過日には、67パーセントほどの確率で1.3等級から4.1等級の範囲に達すると思われています。

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