15年間にわたる、計63,000回もの恒星の観測データから、天の川の謎を解く

【2004年4月9日 ESO Press Release

われわれにとって一番近い銀河である天の川には、依然として謎が多く、その進化や誕生について研究する専門家にたくさんの疑問を投げかけ続けている。デンマーク、スイス、スウェーデンの研究チームが1万4000個にのぼる恒星を15年にわたって観測し続けてきた結果、それらの疑問に対していくつかの答を出すことに成功した。

(太陽系付近の恒星の分布のようすの想像図)

太陽系付近の恒星の分布を示す想像図。クリックで拡大(提供:ESO)

天の川銀河の誕生は、ビッグバンの直後にまで遡る。しかし、誕生から現在のような渦巻き銀河となるまでの間にはいろいろな謎がある。たとえば、星を生み出す過程がいかにして起こってきたか、星の誕生はどの程度のスピードであったのか、激しい様相を呈していたのか、あるいは穏やかだったのかといったことだ。また、重元素などの形成時期や、銀河の化学組成や構造の変化についても、すべて疑問のままであった。

今回発表された観測では、過去15年、1000夜以上にわたって、太陽に似た(スペクトル型がF型、G型の)恒星14,000個以上について調べられている。個々の星について平均4回の分光観測が行われれており、観測の総回数はのべ63,000回にも及ぶ。この膨大なデータの蓄積によって、近傍の星について距離や年齢、化学組成、速度、軌道が明らかにされたのだ。

たとえば、速度の完全なデータが得られたことで、過去から未来までの恒星の動きについて計算し予測することが可能となった。同チームの分析によれば、分子雲、渦巻き部分、ブラックホール、天の川の中心にある棒状の構造など、さまざまな天体が、天の川の円盤部分にある星々の動きに影響を及ぼしてきたこともわかってきた。天の川銀河の進化は、実は従来考えられていた以上に複雑で無秩序的なものだったようである。

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