銀河団に飲み込まれる銀河からのびる、長さ20万光年のガスの尾

【2004年1月20日 HubbleSite NewsCenter / Chandra Photo Album

NASAのハッブル望遠鏡やチャンドラX線望遠鏡など複数の望遠鏡による観測で、高速で銀河団の中心に突入しながら20万光年もの長い尾を引いている銀河のようすが捉えられた。

(銀河団Abell 2125と銀河C153の画像)

銀河団Abell 2125と銀河C153。クリックで拡大(右の画像:左上:ハッブル宇宙望遠鏡による可視光像、左下:VLA(超大型電波干渉計)による電波像、右上:チャンドラX線望遠鏡によるX線像、右下:キットピーク国立天文台4m望遠鏡による酸素輝線の像、左の画像:右の4つの画像を合成したもの)(提供:NASA、W. Keel (U Alabama)、F Owen (NRAO)、M. Ledlow (Gemini Obs.) and D. Wang (U mass.))

この銀河C153は、おおぐま座とりゅう座の境界付近にある銀河団Abell 2125中にあり、地球からは約30億光年離れている。C153は以前はわれわれの銀河系と同じような銀河だったが、銀河団の中心に時速700万キロメートルという猛烈なスピードで突入し、ばらばらにされながら飲み込まれている状態にある。その結果として、20万光年もの長いガスの尾がのびているというわけだ。銀河の腕の部分からは新しい星を作る材料となる水素がはがされ、銀河はすっかりやせ衰えてしまっている。また、銀河団のガスの温度は摂氏2000万度、ガスの尾の温度は摂氏1000万度と、速度も温度も想像を絶するような世界になっている。

このような銀河団と銀河の相互作用現象は、活発な宇宙において渦巻き銀河に何が起こっているのかを探る重要なヒントを与えてくれる。初期宇宙では、渦巻き銀河が銀河団の中に数多く存在していたのだが、長い時間を経ているうちに、それらはまるで消えてなくなってしまっているように見える。銀河団の中にあった渦巻き銀河は一体どこへいってしまったのか、はっきりした答はいまだ疑問のままだ。

C153と同じように銀河団に飲み込まれる銀河は今までにも観測されているのだが、過去の発見例と比較したC153の特徴は、とても激しく早いぺースで銀河の崩壊が進んでいる点や、電波源としてもきわだった存在であるという点だ。今後進化が進むと、このC153は渦巻きの部分を失い、中心のバルジと円盤部分を持ったS0型銀河(ちりや若い星を含まずバルジと円盤部からなる銀河、レンズ状銀河)と姿を変えていくと考えられている。

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