みなみじゅうじ座に特異な天体が出現

【2003年8月25日 VSOLJニュース(110)】

みなみじゅうじ座は全天一小さな星座ですが、南天の天の川のただ中に位置しているため、新星などの銀河系内の突発天体がときおり報告されます。今回発見された天体は、当初新星かと思われましたが、それ以上に珍しい特異な変光星である可能性が高まってきました。今後の追観測がたいへん重要です。

この天体は、オーストラリアのタイバー(V. Tabur)さんが、8月20.486日(世界時、以下同様)に撮影したCCD画像から、10.2等級で発見したものです。タイバーさんは、今年7月にもへびつかい座の新星を独立に検出している(vsolj-news 107)など、たくさんの新天体を発見されている熱心な観測者です。天体は、8月18日撮影の画像では11.9等ほどで見えていましたが、それ以前の画像では全く見られませんでした。天体の位置は、

赤経  12時23分16.2秒
赤緯 -60度22分34秒   (2000年分点)

と報告されています。タイバーさんのさらなる観測で、8月21.5日には1等級ほど明るくなっていると報告され、さらに南アフリカのモナード(L. A. G. Monard)さんの観測では8月21.71日に9.2等級(フィルターなしCCDでの赤等級)との報告もあります。ASAS-3データ(vsolj-news 103参照)では、8月17日には12.5等級ほどの明るさだったのですが、13日にはずっと暗かったようです。

この天体のスペクトルが2つの天文台で撮影されています。ひとつのグループは、水素の線の存在から、この天体は古典新星であろうと推測しています。一方、別のグループは、典型的な古典新星に見られる特徴が見られず、この天体はV4332 SgrやV838 Monのような特異な天体、post-AGB星ではないかと推測しています。この天体のさらなる観測が望まれます。