満月の夜のペルセウス座流星群

【2003年8月8日 国立天文台天文ニュース(662)

ペルセウス座流星群は、毎年7月下旬から8月下旬頃に活動する流星群として知られています。日本では8月13日未明に流星の数が最も多くなる極大を迎えます。8月12日晩から流星数が増えていき、ペルセウス座が空高く昇る8月13日の明け方にかけてが、ペルセウス座流星群を楽しむチャンスとなります。残念ながら今年のペルセウス座流星群の極大日の夜は、満月の明るい光に阻まれて、肉眼で見ることができる流星の数が減ってしまいます。それでも、都心に近い場所で、1時間あたり10個から20個程度の流れ星を見ることが可能でしょう。空気の澄んだ高地や山岳地帯などでは、月明かりを散乱して空を明るくする大気中の麈(ちり)や水蒸気が少なく、暗い夜空の中に微光流星までも確認することができるようになります。このような最良の条件であれば、1時間あたり60個程度の流星を見ることができます。流星は夜空のどの方向にも飛ぶので、空が晴れていて月が直接視野に入らない方向を眺めるか、建物や木などで月の姿を遮りながら観望するなどの工夫をするといいでしょう。

流星群は、彗星から放出された直径1ミリメートルから数センチメートル程度の麈で形成される「ダスト・トレイル」と呼ばれる麈帯と地球の軌道が交差する時に発生します。地球とダスト・トレイルが遭遇する位置関係から、地上から見るとペルセウス座にある決まった方向(放射点)から流星が飛んでくるように見えます。放射点が空の高い位置にくると流星の数も増えるので、8月12日夜から13日にかけて日付が変る頃から、空が白み始める13日の午前3時半過ぎ頃までが注目する時間帯です。北の空のカシオペヤ座の東隣りにあるペルセウス座の近くに放射点があります。この放射点を中心に群流星が四散するように見えるでしょう。

ペルセウス座流星群は、スイフト-タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)を母天体とする流星群です。周期約130年のスイフト-タットル彗星が回帰した1992年前後に突発的に流星数が増大しており、1991年、1992年にはZHR(理想観測条件下での1時間あたりの流星数)400個以上の流星が出現し、特に1991年の予想外の突発出現は、日本のアマチュアの観測が速報として世界へ報じられています。その後、ZHR100程度になり毎年同じ位置で地球がダスト・トレイルと遭遇し、安定した出現を見せている老舗の流星群です。ここ数年毎年観測される主極大は8月13日13時40分(日本時間)、その他の副極大は8月13日11時40分、23時40分(日本時間)頃にあると予想されています。8月13日の夜半前にも多少流星数が増加するかもしれません。

ライチネン(Esko Lyytinen)氏の計算によると、スイフト-タットル彗星が11回帰前の西暦569年に放出した塵によって形成されたダスト・トレイルが、8月13日の午前9時10分頃(日本時間)に地球に接近して流星数の増加が予報されています。このダスト・トレイルは、1991、92年などに見られた突発出現と同じトレイルとされており、日本ではやはり8月13日の明け方が注目です。また、ライチネンの計算によると、来年2004年8月11日20時54分(世界時)には、1回帰前の1862年に放出され形成されたスイフト-タットル彗星のダスト・トレイルが、地球軌道に18万キロメートルまで近づくため、流星数の急増が予報されています。月も無い好条件なので、日本では2004年8月12日未明が楽しみです。

スイフト-タットル彗星は逆行軌道であるため、放出された麈は秒速59キロメートル(時速21万キロメートル) と、毎年定常的に発生する主要流星群の中では最も高速の流星群です。高速流星は、上空90キロメートル付近に消えずに残る「流星痕(りゅうせいこん)」と呼ばれる輝く雲を残す頻度が高くなります。極大日の夜は、南の空の満月のすぐ横に真っ赤な火星の姿も容易に確認できます。彩り豊かな夏の風物詩を楽しんではいかがでしょうか。

※この原稿は宇宙科学研究所の阿部新助(あべしんすけ)さんにいただいたものを編集しております。

<参照>

<関連リンク>