ガンマ線バースト残光、日本のアマチュアが観測に成功

【2003年3月31日 国立天文台天文ニュース(627)

ガンマ線バーストは、数秒から数10秒の短時間に強いガンマ線を放射する現象で、宇宙の遠方で起きる非常に強力な爆発現象です。その原因は極超新星爆発か、あるいはブラックホールなどの合体などとされていますが、いまだに詳しいことはわかっていません。1997年以降、ガンマ線バーストの起きた後に、可視光での残光(アフターグロー)の存在が判明し、その追跡観測が試みられてきました。ガンマ線バーストのメカニズムを研究するためには、この可視光残光の観測は欠かせないものとなっています。しかしながら、残光は急激に暗くなってしまうので、ガンマ線バースト発生後、迅速な通報・追跡体制が望まれていました。国立天文台・天文ニュース(588)で紹介したように、現在、HETE2(High Energy Transient Explorer 2)衛星が活躍を続けており、多くの成果があがりつつあります。

(ガンマ線バーストGRB030329の写真)

ガンマ線バーストGRB030329。左は29.574日、右は30.549日撮影(いずれも世界時)。機材:25cm反射(F5)+CCD。クリックで拡大(撮影:アストロアーツ 門田健一)

2003年3月29日20時37分14秒(日本時)、かなり明るいガンマ線バーストがしし座の方向に出現しました。その約73分後には位置が特定され、ちょうど日本から観測可能な時間帯だったため、理化学研究所、東京工業大学、京都大学、宮崎大学、岡山県・美星町の美星天文台などのグループが観測を行い、13等という非常に明るい残光が暗くなっていく様子を捉えることができました。今回の残光は、極めて明るかったため、都心の東京工業大学のグループは、校舎屋上での観測に成功しています。それ以上に心強いのは、今回の残光が初めて日本のアマチュアによって観測されたことです。

観測に成功したのは、滋賀県にあるダイニック・アストロパーク天究館の高橋進(たかはしすすむ)氏で、観望会などに用いる60cm反射望遠鏡に冷却CCDカメラを利用したものでした。真夜中から明け方まで、その光度変化を追い続けたということで、非常に貴重な例となりました。日本のアマチュアの活躍は、天文ニュース(626)で紹介したように天体発見の分野でも続いています。これは観測や解析のレベルの高さを示しています。HETE2衛星の開発に携わり、またガンマ線バースト残光の観測も指揮する河合誠之(かわいのぶゆき)東京工業大学教授は「日本のアマチュア天文家は、世界的にレベルが高く、層が厚いはず。彼らの活躍で、初期の残光の性質がさらに明らかになる可能性があり、もっと多くのアマチュア天文家にガンマ線バーストの追跡観測に参加して欲しい」と述べています。

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