超新星残骸DEM L71の観測からその起源を探る

【2003年3月17日 Chandro Photo Album

X線観測衛星チャンドラが撮影した、小マゼラン雲中にある超新星残骸DEM L71の画像が公開された。

(超新星残骸のX線画像とHα線画像)

超新星残骸DEM L71。左はX線の画像、右はHα線の画像(提供:X線:NASA/CXC/Rutgers/J.Hughes et al、Hα線:Rutgers Fabry-Perot)

チャンドラの観測結果によれば、画像の内側の水色をした部分は1000万度もの高温になっているということだ。爆発によって吹き飛ばされた物質とそれに伴う衝撃波により作られた、外側の明るい部分と内側の水色の部分という典型的な二重構造のようすがよくわかる。

観測データを詳しく解析することで、残骸物質の質量や化学組成がわかる。計算によれば、残骸物質の質量は太陽と同じくらいで、酸素やケイ素に対して鉄の割合が大きいということがわかった。また、爆発後数千年が経過していることもわかった。

超新星爆発には主に2つのタイプがある。1つは大質量星の爆発であるII型超新星で、もう1つは白色矮星の爆発であるIa型超新星である。Ia型超新星は、白色矮星と連星系になっている伴星から質量が白色矮星に降り積もり、白色矮星の質量が太陽の1.4倍を超えると不安定になって大爆発を起こすというメカニズムの現象だ。見積もられた質量などから考えると、DEM L71はこのIa型超新星の残骸になる。

超新星残骸の研究の目的の1つは、その元となった超新星爆発がどのタイプのものであったかを同定することだ。DEM L71がIa型だとわかったので、その爆発のメカニズムや爆発後の進化のようすを調べる手がかりが得られたことになる。

<参照>

<関連リンク>