1006年の超新星は史上もっとも明るい星だった

【2003年3月10日 NOAO Press Release

1006年におおかみ座に現れた超新星は、記録に残っているものとしてはもっとも明るい星であることがわかった。

(超新星SN1006の跡に広がるガスの画像)

超新星残骸SNR1006。筋のように見えているのは水素ガス。右はガスが衝撃波で広がっていくようすを見やすく表したもの。白い部分が1987年の位置で、暗い部分が1998年の位置に対応する(提供:Middlebury College/NOAO/AURA/NSF

1006年の超新星の出現は、日本の「明月記」をはじめ中国・エジプト・イラク・イタリア・スイスにも記録が残っている現象だ。南米チリに設置されているセロ・トロロ・アメリカ天文台の観測から、超新星SN1006の跡にかすかな水素ガスのシェル(球殻)状構造が見つかった。研究者たちはこのシェルが膨張していくようすを11年間観測し、見かけ上の膨張速度を求めた。

一方、より近くにある同じ種類の天体を観測することで、シェルが膨張していく実際の速度を測ることができる。観測の結果、実際の速度は秒速2900kmと計測された。見かけ上の速度と実際の速度がわかれば、簡単な計算によって超新星までの距離が計算でき、超新星SN1006までの距離は7100光年ということがわかった。つまり、超新星爆発が観測されたのは1006年だが、実際にはそれよりさらに7100年前に爆発していたということだ。

超新星の種類にもいくつかタイプがあるが、SN1006はほぼ間違いなくIa型の超新星だと考えられている。Ia型の超新星は爆発後数週間、太陽50億個分もの明るさで輝き続ける。また、Ia型超新星はどれも真の明るさが同じなので、遠くの銀河中でこのタイプの超新星爆発が起こった場合、その見かけ上の明るさから銀河までの距離を測定するのに用いられることもある。

SN1006の場合は我々の銀河系内で起こった超新星爆発なので、距離が近く、ひじょうに明るく輝いていたはずだ。7100光年という距離を使って求められた明るさは-7.5等級で、金星(最大-4.7等級)よりも明るく輝いていたことになる。

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