宇宙背景マイクロ波放射の観測から宇宙の年齢が正確に測定された

【2003年2月12日 Goddard Space Flight Center

NASAのマイクロ波観測衛星WMAPの観測により、宇宙のもっとも初期の姿が捉えられた。この観測により、宇宙の年齢が137億年であることも高い精度で求められた。

(全天の温度の揺らぎを示した図)

全天の温度の揺らぎを示した観測結果の図。青は2.73度より低温の部分、赤は高温の部分を表している(提供:NASA/WMAP Science Team)

ビッグバンによって宇宙が誕生した直後に発せられた光は、現在は宇宙背景マイクロ波放射として観測される。このマイクロ波は絶対温度2.73度で全天に広がっているが、その温度にわずかに揺らぎがある。揺らぎは100万分の数度というひじょうに小さいものだが、WMAPが1年かけて全天の揺らぎを正確に観測したのだ。

今回測定された揺らぎを再現するようにモデルのパラメータを選ぶことで、宇宙の年齢や進化のようすを正確に調べることができる。モデル計算の結果、宇宙の年齢は137億年であることや宇宙誕生からわずか2億年後に最初の星が輝き始めたことなどが明らかになった。

2001年6月に打ち上げられたWMAPは、今後さらに3年間かけてマイクロ波の観測を続ける予定だ。ビッグバン直後の宇宙の状態や、宇宙の約4分の3を占める謎に包まれた「ダークエネルギー」の性質について、新しいデータをもたらしてくれると期待されている。

なお、WMAPのWは、昨年亡くなった天文学者David T. Wilkinsonにちなんでつけられたものだ。Wilkinsonは宇宙背景放射に関する研究の草分け的存在で、1989年に打ち上げられた宇宙背景放射観測衛星COBEの計画にも参加していた人物である。