2002年の「しし座流星群」

【2002年10月3日 国立天文台天文ニュース(586)

昨年、日本でも歴史に残る大流星雨を見せてくれた「しし座流星群」ですが、今年も、その時期が近付いてきました。国立天文台に対しても、問い合わせが多くなってきました。ここでは今年のしし座流星群の大略の見通しを紹介します。

昨年の天文ニュース(471)で2001年の予想をお知らせしましたが、そのうち前半の予想は大きく外れ、後半でご紹介したイギリスのアッシャー(Asher,D.J.)博士たちの予想が的中しました。彼らが提唱しているダスト・トレイル・モデルに基づく予想は、2001年以前の出現を鑑みても、ほぼ的中しています。したがって、しし座流星群に関しては、この理論の正しさが証明されたと考えて良いでしょう。

しし座流星群の母親であるテンペル・タットル彗星は1998年2月末に近日点を通過し、すでに相当遠く離れていますので、古典的な予測では、今年は大出現はなく、流星数は減っていく時期と考えられていました。しかしながら、ダスト・トレイル・モデルによる予想では、今年も大出現するとされています。大出現のピーク時刻は2回あり、日本時刻で19日の13時頃と19時半頃、そのピークにおける予想出現数は1時間当たりそれぞれ数千個とされています。この予想が当たれば、月明かりに邪魔されながらも、日本で昨年に見られた流星雨並みの出現が期待されます。ただ、このピークは残念ながら、今年は日本では見ることができません。前者のピークは昼間であり、後者のピーク時刻には、まだしし座が地平線に現れていない時刻だからです。その上、大出現はピーク前後の1〜2時間しか継続しません。流星雨を眺められる地域は、前者が欧州西部・アフリカ北西部、後者がアメリカ中西部となります。

とはいえ、日本でもピークとなる前後、わずかではありますが流星の出現は望めると考えられます。もともと「古典的な予想」での極大時刻は18日の朝6時頃でしたから、18日、19日、そしてピークの後の20日の3日間にわたって、夜半から夜明けまでの間に、散発的にしし座流星群に属する流星が見られるでしょう。もしかすると16日早朝あたりから出現が見られるかもしれません。ただ、大出現の時刻に関しての予測は、かなり正確になりましたが、出現数やピーク以外の出現に関する予測は、まだまだできていないのが現状です。日本で今年どの程度の数の流星が出現するのか、わからないと言った方が正しいでしょう。

流星群は、天文学者だけでなく一般の方々でも容易に眺められる天文現象の一つです。むしろ、どんな出現になるのか、ご自身の目で確かめるという気持ちで、あるいは日本では少ししか期待できないけれど、もしからしたら…という可能性も頭の片隅に入れて観察されることをお奨めします。

しし座流星群の流星は明るい火球(かきゅう、流星の中でも特に明るいものを指す)が多く、痕(こん、星が流れたあとに残るぼんやりと光って見えるもの)も多く発生するので知られています。数だけではなく、火球や痕を楽しむというのも一興かもしれません。

<参照>

  • McNaught, R.H., and Asher, D.J., WGN, 27, 85 (1999)
  • Jenniskens, P., ESA SP-495, 83 (2001)
  • Lyytinen, E.J., van Flandern, T., Earth, Moon, and Planets 82-83, 149 (2000)

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