ペアをなすカイパーベルト天体 1998 WW31

【2002年4月18日 STScI Press Releases

NASAのハッブル宇宙望遠鏡などによる観測により、太陽系の外縁部に存在するカイパーベルト天体の中にも、惑星と衛星の関係のようにペアになって公転しているものがあることがわかった。

カイパーベルト天体1998 WW31の写真。連星系となっているようすがわかる(提供:NASA and C. Veillet (Canada-France-Hawaii Telescope))

カイパーベルトとは、海王星軌道の外側に広がる、太陽系が形成された時に残された物体が集まっている「ごみ置き場」のような領域のことである。そこには「カイパーベルト天体」と呼ばれる氷でできたたくさんの天体があり、短周期彗星のうち半分はこの領域が起源であると考えられている。冥王星やその衛星カロンもカイパーベルト天体のひとつである。

現在までに500個程度のカイパーベルト天体の存在が知られているが、このうちいくつかはペアをなしていることが最近になってわかってきた。そのうちの1つ、1998 WW31と呼ばれるカイパーベルト天体の観測から、お互いの周りをめぐる周期は570日で、2つを合わせた質量は「冥王星+衛星カロン」の5000分の1ということがわかった。また、軌道がとてもつぶれた楕円形で、お互いの距離が4000kmから40000kmまで変化することもわかった。

カイパーベルト天体は非常に遠くにあり、しかも小さくて暗いため、その性質についてはまだよくわかっていないところが多い。今回のようなペアのカイパーベルト天体を見つけることで、質量やそれぞれの大きさなどを測定することができる。カイパーベルトの研究は、太陽系の起源と進化を調べる上で重要であると同時に、他の恒星の惑星系を調べるのにも役立つ。1998 WW31が引き金となって連星カイパーベルト天体が相次いで発見され始めたが、今後の成果にも期待したい。