中間質量ブラックホールの正体に迫る

【2002 年 1 月 21 日 The University of Michigan News Release

銀河中心には太陽の数百万倍〜数億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールがあると考えられている。一方で、太陽の数倍〜十数倍程度の質量の恒星ブラックホールも見つかっている。では、その中間の質量を持つものの正体は?この疑問を解決するかもしれない結果が発表された。

(X 線で見た M 81、およびその一部を HST で拡大撮影した 2 枚の写真)

M81 の全景(左上)とその一部の領域を HST で拡大したもの(右下)。左上写真の黄色い点の部分が ULX、そこに対応する天体が右下写真の青で囲まれた部分(写真提供:The University of Michigan)

中間質量のブラックホールは強い X 線を放射している可能性があるが、それに対応する可視光線での天体を見つけることが重要な課題であった。ミシガン大学の Joel Bregman たちはそのような対応天体を見つけたということだ。彼らはチャンドラ X 線天文台による M51 と M81 の観測でそれらの銀河の腕の部分に高明度 X 線源(Ultraluminous X-ray Sources、以後 ULX)を発見し、さらにその ULX に対応する可視光線で見える天体をハッブル宇宙望遠鏡による観測から同定したのだ。これら ULX の X 線での明るさは銀河系内の強い X 線源の 10 倍で、X 線の強度から推定されるブラックホールの質量は太陽の 30-1000 倍となる。これは恒星ブラックホールの 10-100 倍は重いが、銀河中心の超大質量ブラックホールの数百万倍は軽く、まさに中間質量のブラックホールということになる。

ハッブル望遠鏡による観測データや、これら X 線源が腕の部分に見つかったという事実から、この対応天体は若い大質量星ではないかと考えられている。大質量星のガスが中間質量のブラックホールに落ち込む時に強い X 線を放射しているのが観測されているというわけだ。ブラックホールと恒星がお互いの周りを回る周期を測定すれば、(恒星の質量を見積もって)ブラックホールの質量がわかる。そうすれば、この強い X 線源が本当に中間質量のブラックホールかどうかがわかるだろう。もし違っていたら?その時は、一体どうやってこんなに強い X 線を放射することができるのか、新しく考え直さなければならない。それはそれで興味深い結果となるだろう。

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