ツイストを踊る星 かじき座AB星の自転を観測

【2001年12月12日 PPARC News and Press Releases

オーストラリアのアングロ・オーストラリア天文台の 3.9m 望遠鏡を使った恒星黒点の観測から、その恒星の自転の様子がまるで陽気なツイストを踊っているかのように変動していることがわかった。

(コンピュータで再現したかじき座 AB の画像)

コンピュータで再現したかじき座 AB。大きな恒星黒点があるのがわかる。赤い部分は X 線で輝く 1500 万度の希薄な水素プラズマ(画像提供:PPARC)

この星は南天のかじき座にあるかじき座 AB と呼ばれる星で、地球から約 50 光年離れており、太陽に似た若い恒星である。スコットランドの Andrew Collier 博士とフランスの Jean-Francois Donati 博士は 8 年にわたってクリスマスの頃の期間だけオーストラリアの天文台でかじき座 AB を観測し続けた。

この星はわずか 12.3 時間で自転している。4 年前、この恒星の黒点の観測結果から、太陽と同じように赤道付近のほうが極付近よりも速く自転していることがわかった。そしてさらに詳しい観測の結果、この緯度によって異なる自転速度が一定でないことがわかったのだ。ある期間は赤道付近は高速で自転し、極付近はゆっくりと自転するが、その後赤道付近の自転は減速し、一方で極付近の自転が高速になるのだ。(しかし常に赤道付近のほうが極付近よりも速く回っている。)このような自転のねじれは理論的に予測されていたが、実際に観測されたのはこれが初めてである。

今回得られた結果は、恒星内部で発生する磁場が内部のガスの循環を変える「のり」のような役割も果たしているという事実をはっきりと示してくれた。磁場の活動とねじれた自転の間の関係が明らかになったわけだ。さらに、近接連星系の軌道不安定性に関する謎も解き明かしてくれるかもしれない。磁場の強さの変動に伴って恒星が変形し、それによって引き起こされる重力の強さの変化が連星系の軌道周期をわずかに変えるという理論があるが、今回かじき座 AB に見られた自転速度の周期的なねじれの大きさは、他の連星系で観測されている軌道周期の変化を生み出すのに十分な大きさだということだ。

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