HST、太陽系外惑星に大気を発見
化学組成も調べる

【2001年11月29日 STScI PR01-38

NASAのハッブル宇宙望遠鏡を使って太陽系外の惑星を研究していた天文学者たちが、その惑星に大気があることを初めて直接検出し化学組成を測定することに成功した。この成功は、ハッブル望遠鏡や他の望遠鏡を使って系外惑星の大気の組成を測定することができることを示したことに大きな意義がある。地球外生命活動の証拠を探すのにも利用できるかもしれない。

大気の見つかった惑星とその親星のイラスト

大気の見つかった惑星とその親星のイラスト。惑星と親星の距離が近いので、見かけの大きさは地球から見た満月の 23 倍、明るさは太陽の 500 倍にもなる(イラスト提供:STScI)

この惑星は、地球から 150 光年離れたペガスス座にある HD 209458 という恒星(黄色で 7 等級)の周りを回っている。惑星自体の存在は、1999 年、HD 209458 へ惑星が重力的な影響を及ぼしていることからから発見された。惑星の質量は木星の 70%(地球の 220 倍)と推定されている。また、恒星の表面から惑星の間はたった 640 万 km しか離れておらず、公転周期はわずか 3.5 日である。これほど近いところにあるので大気の温度は摂氏 1,100 度にもなるが、惑星の重力が強いので大気が失われてしまうことはない。

カリフォルニア工科大学、ハーバード・スミソニアン天体物理センターの David Charbonneau たちの研究グループはハッブル望遠鏡の STIS 分光器を用いて観測をおこない、大気中にナトリウムが含まれていることを発見した。この組成は、地球から見て親星の前を惑星が通過する際に調べられた。恒星の光が惑星の大気を通して見られたのは初めてのことだ。

今回の手法は、地球から見て親星の前を惑星が通過するような軌道にある系にしか応用できない。このような系は今のところこの HD 209458 しか見つかっていないが、今後の観測でどんどん増えると期待されている。そうすれば多くの惑星の大気の組成を調べられるようになるだろう。今回発見されたナトリウムの他、メタンや水蒸気、カリウムなどが含まれている可能性がある。惑星ごとにどのような違いがあるのか研究したり生命の有機活動に由来すると考えられる成分を発見したりするのが今後の目標となる。

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