金星の地形を詳細にとらえる 電波望遠鏡によるレーダー観測

【2001年5月17日 National Radio Astronomy Observatory Press Release (2001.05.10)

世界を代表する2つの電波望遠鏡を連携させたレーダー観測により、地上から金星の地表構造の詳細をとらえることに成功した。

アレシボ-GBTレーダー・システムによる金星の広域画像
アレシボ-GBTレーダー・システムによる金星の広域画像。
解像度は約5キロメートル。

マックスウェル山周辺のクローズアップ
マックスウェル山周辺のクローズアップ。
解像度はなんと、約1.2キロメートルである。

2つの電波望遠鏡とは、単一アンテナからなるものとしては世界最大の電波望遠鏡であるプエルトリコのアレシボ電波望遠鏡 (口径305メートル) と、それに次いで世界で2番目に大きいアメリカ・ウェストバージニア州のロバート・C・バード・グリーンバンク電波望遠鏡 (口径100メートル) である。

世界最大出力のレーダーでもあるアレシボ電波望遠鏡は、最近になって大幅な機能アップが計られており、レーダー出力もより強力になっている。

グリーンバンク電波望遠鏡 (GBT) は2000年8月に初観測が行なわれたばかりの新しい望遠鏡だ。アレシボ電波望遠鏡が固定式であるのに対し、こちらは自由可動式となっており、単一アンテナで自由可動式のものとしては世界最大である。

観測は、アレシボ電波望遠鏡から金星に向けてレーダー波を打ち、反射波を両方の電波望遠鏡で受信するという手法で行なわれた。この「アレシボ-GBTレーダー・システム」による観測は、今回が初めてのことだ。

マックスウェル山周辺のクローズアップ

アレシボ-GBTレーダー・システムがとらえた150メートルほどの大きさの小惑星「2001 EC16」。地球から地球〜月間距離の8倍程度の距離にあるときの観測で、解像度は15メートルほどである。

そして結果は、なんと金星地表の約1キロメートルの地形までをとらえることに成功した。金星の地形の詳細がとらえられたのは、10年前にNASAの金星探査機「マゼラン」が金星上空からレーダー観測をして以来のことだ。金星は地質学的に活動的な惑星である可能性が高いと考えられており、今回のデータはマゼランの観測時からの金星の地表の変化を調べるために用いられる。

今回は金星に加えて、地球近くを通過した微小な小惑星の観測も試みられた。観測対象は「2001 EC16」と呼ばれる小惑星で、大きさはわずか150メートルほど。アレシボ-GBTレーダー・システムは、2001年3月26日、小惑星が地球からわずか地球〜月間距離の8倍程度の距離にあるときにこの小惑星を観測した。

結果は、小惑星の形状をおよそ15メートルの解像度でとらえることに成功し、小惑星のいびつな形状が明らかになった。これも、すばらしい成果といえる。

今後、アレシボ-GBTレーダー・システムにより、多数の小惑星や土星の衛星「タイタン」などの観測が計画されている。これからの成果におおいに期待したい。